本記事では、クリア済みの筆者が
◇前半では未プレイの方向けに、ネタバレなしでゲームの概要や魅力をご紹介し
◇後半は既プレイの方向けにネタバレありで、本作の世界観について解説、考察、感想レビューしています。
どんなゲームか知りたい方や、クリアしたけどゲームの世界についてもっと詳しく知りたい、考察が見たい、という方に向けて執筆しています。どうぞご活用ください。
『Chants of Sennaar(センナールの聖火)』の基本情報
開発 / 販売元 | Rundisc / Focus Entertainment |
対応機種 | Steam / PS4 / Switch / Xbox Series X|S / Xbox one / Epic Games Store |
価格 | Steam:¥2,480 PS4 :¥2,420 Switch:¥2,420 Xbox Series X|S / Xbox one:¥2,450 Epic Games Store:¥2,480 |
ジャンル | パズルアドベンチャー |
プレイ人数 | 1人 |
発売日 | 2023年9月6日 |
ゲーム概要
歴史の始まりから人々は分断され、もはや言葉を交わさなくなっていた。
しかし言い伝えでは、ひとりの旅人が、いつの日か壁を取り払い、調和を取り戻す知恵を見い出すであろう、とされている。
人々が過去を忘れた「バベルの塔」からアイデアを得た、色彩豊かで情緒的な世界を歩き回ろう。
果てしない迷宮に伸びる階段を上り、不吉な予感漂う真実に迫り、古代言語によって固く閉ざされた魅力的な世界の謎を読み解こう。
どんなゲーム?
『Chants of Sennaar』はフランスのゲームメーカーRundiscが開発した
3Dパズルアドベンチャーゲーム
「バベルの塔」のような建物に迎え入れられた主人公が、
分断された民族を1つにまとめるため、多数の言語をマスターしていくゲームだ。
人々の会話や振る舞い、時には看板や石板などから言葉の意味を予想して、物語を進めよう。
一見難しそうに思えるゲームだが、ゲームの作りが丁寧なので、完全に詰まるようなことはなく、よく出来ているので安心してほしい。
また、日本語訳の質もかなり高めで、自然な翻訳がなされている。さすが、言葉を扱うゲームだな、と感心しっぱなしだった。
具体的な魅力については下記パートでお伝えしていこう。
ちなみにSteamでは発売からわずか4ヵ月で約9000件のレビューがついており、レビューステータスは「圧倒的に好評」となっている。
本作の魅力
言葉をパズル化することの楽しさ
本作では
1文字ずつ、「これかな?」と思う意味を入力することができる。
入力すると、
「閉じる レバー」
のように表示され、意味がどんどん分かってくる。
人との会話ともなってくると、楽しくなってくること間違いなしだ。
また、主人公は定期的にノートに絵を描く。
絵と同じ意味を持つ言葉をはめ込み、見開き1ページが完成すると、本当の意味を教えてくれる。
本当に分からなくなったら、総当たりをしてもいい。
でも1つ注意なのは、絵を描いたからといって、今知っている言葉だけで完成するとは限らない。
総当たりをしても無理だったこともよくあったのだ。言葉を集めるのも重要なパズルの1つだ。
無言の主人公
時には兵士に追われ、時には危険な道も通る主人公。
主人公はまったくしゃべらず、何を考えているかはよく分からない。
分断された民族を1つに……できるのだろうか?
異様な色彩の世界
本作のグラフィックは独特な絵柄をしている。
バベルの塔、のような建物は、階層ごとに雰囲気が違うのでそれも大きな魅力の1つだ。
個人的には1階の土っぽい黄色が好き。
垣間見える謎テクノロジー
ゲームを始めると、文明レベルはそこまで高くないな……
と思わせておいて、何やらロストテクノロジーのようなマシンが壁に埋め込まれていたりする。
この塔の本当の謎とは一体何なのか。
本作は
パズルゲームが好きな方は、ぜひプレイして解き明かしてみてほしい、遊んでみてほしい逸品だ。
次パートからはネタバレありなので、未プレイの方は注意。
各ストーリーやエンディングの解説(ネタバレあり)
ストーリー解説
ゲームを開始すると、主人公は棺のようなところから目覚める。
案内人に導かれてたどり着いたのは、塔の1階、教徒の暮らす階層だ。教徒たちは兵士に、上へ行く大きな扉を閉じられて1階から出られない状況のようだ。主人公はそこでとある「子ども」に出会い、その子から言葉やステルスアクションを学んだ。そして隠し道から上へ行くと、兵団が住む2階に着いた。
2階層では、兵士との直接の会話はほぼできず、ステルスアクションを駆使して進む必要がある。時には兵士に変装して、言葉を盗み聞きしたり、像や看板などから言葉を学んだ。兵士は選民の号令を待っていることが分かると、主人公は鐘のある場所まで行き、鐘撞きの本から号令方法を知り、号令をかける。兵士は号令によってどこかに行ったので、無事3階に上がることができた。
3階は吟遊民の暮らす階層だ。サルが劇のマシンを動かしたり、船に乗れたりする。地下水路もあったりと、今までで1番広い場所かもしれない。ようやく劇場という場所に着くと、吟遊民が主人公の演劇が行われていた。内容は、愚かな吟遊民が迷って上階へ行く道に行こうとするとモンスターに出会うという話。だから、吟遊民は誰も上へ行こうとしないし、上に行くのは愚かだという考えが根付いているようだ。迷路のような暗闇の中を、コンパスを頼りに試行錯誤進むと、モンスターが住む鉱山のような場所があった。モンスターは光に弱いらしく、光を利用しモンスターから逃げて、なんとか4階へ上がることができた。
4階は錬金術師の暮らす階層だ。科学が発展していて、エレベーターもあれば、化学式があったり、鉱山があったりする。物質や数字、化学式を解読していくうちに、頂上に続く扉が閉ざされていることに気づく。この扉は特定の配合で作られた鍵だけで開くことができ、主人公はなんとか答えを見つけ出して開くことに成功した。
5階は、錬金術師の町よりもさらに科学が発展した階層で、「孤独の民」が暮らしている階層だ。彼らは皆、機械を頭からかぶり、VRゲームのようなものをしている。誰も他人と関わることをしない、まさに孤独の民の町だった。謎めいた機械から、孤独の民の言葉はすぐに理解ができた。そして、孤独の民の言葉を使った暗号を解き進むと、ある人が待っていた。その人はなんと、主人公の創造主であり、主人公が、この分断された塔の問題を解決するために作られたロボットであることを知る。さらにこの塔の過去のことも教えてくれた。もともと塔は孤独の民だけが暮らしていたが、異国の民族がやってきたのだという。そして孤独の民は人を恐れ、喋ることを辞めてしまい、現状に至ったという。そこで主人公は鍵を渡され、各階層の管理者のような孤独の民を開放し、各民族に会話をもたらしてほしい、と頼まれることとなる。
ここから、バッドエンドとトゥルーエンドに移る。
エンディング解説
エンディング分岐はこうだ。
トゥルーエンドは下記の条件を達成して、塔の頂上に登ると見ることができる。
- 各階層の、ターミナルと呼ばれる機械から、会話をしようとしている民族の通訳を全部すること。
- 各階層の、孤独の民の部屋の、奥の機械を停止させること。
バッドエンドは、トゥルーエンド達成前に塔の頂上に登ることで見ることができる。また、トゥルーエンドの条件を達成したあとは、バッドエンドは見ることができないので注意が必要だ。
バッドエンド解説
バッドエンドはすぐに見ることができる。
パパの制止を振り切り、使命を果たさず、塔の頂上に登ることでムービーへ。
雨の中悲しそうに塔の頂上に座る主人公をバックに、エンドロールが流れる。
悲しい、ひたすら悲しい。ここに、これ以上の解説は不要だろう。
トゥルーエンド解説
トゥルーエンドは条件を満たしても、すぐに始まらない。
条件を満たして塔の頂上に登ろうとすると、自分と似た形のロボットに電撃を受けて気絶する。
気絶から起きて塔の頂上へ行くと……
一見バッドエンドかのような演出が。
するとシーンが移り、ゲームスタートの時の棺から目覚めてしまう。先に進むとあの子どもがおり、主人公を導いてくれる。扉をくぐると突然ワープして塔の階層が変わったり、孤独の民のマークが入った不気味な謎解きパネルがあったりと、この場所が現実のものと違うことが分かる。パネルを解いて2階から3階へ、3階から1階へワープし、1階の、兵士が閉ざしていた扉を開くと事態が急変する。扉が開くと同時に、あの鉱山で見たモンスターが走って追いかけてくるのだ。主人公は逃げて走り、ワープしまくる。逃げている途中に、モンスターの銅像の名前が「孤独の民」になっていることも分かった。そのまま走り続け、子どもが用意したトロッコに乗ると、真っ黒な世界についた。そこには顔に機械を装着された自分がいたのだ。横の停止ボタンを押すと、主人公は目が覚め、現実に戻ることができた。現実では、VR機械から動かなかった住民たちが機械から解放され、「孤独の民は消えたんだね!」などと言っている。その後塔の頂上へ向かうと、主人公を待っているのは雨ではなく、"みんな"だった。頂上の機械はすべて光って起動しており、それを起動することでトゥルーエンディングへ。機械は5つの光の点が空中に浮かびあがり、順番に各言語を表示していく。最後に孤独の民のマークを表示すると、光はぐるぐると回り続けるようになった。すると、塔の頂上にいるすべての民族が楽しそうに会話を始め、民族間の壁がなくなったことが分かる。ぐるぐる回る光とみんなをバックに、塔全体を移すように画面が引いてトゥルーエンドとなる。
ストーリー解説は以上だ。
次はこれらの情報をもとに、各考察をしていこう。
考察
孤独の民って結局何なの?
これに対する考察は
最上階の住人で、モンスターになってしまった人々を孤独の民と呼んだ
主人公が仮想世界から脱出した後、孤独の民だと思っていた民族が
「孤独の民は消えたんだね!」と言った。こいつら孤独の民じゃなかったのか……と訳が分からなくなった方もいるのではないかと思う。
ここでは便宜上、主人公が出会った最上階の人々を「5階の人々」、
モンスターになった人々を「孤独の民」と呼ぶことにする。
前提事実から整理すると
仮想世界にいたときに、モンスターの銅像の名前が孤独の民となっていた。そしてAIの顔がモンスターと似ていたことを考えると、「孤独の民」=モンスターと考えて間違いない。
ではなぜこうなったのか?それは、もともと孤独の民は、「5階の人々」と「孤独の民」の2派閥に分かれていて、孤独の民だけが、特に発達した科学技術を持っていたのだと考えるとすべての辻褄が合うのだ。
派閥の1つである「孤独の民」は科学を発展させ、完全自立型のAIを作って最上階そのものを運営させていた。ところが何が起きたか、孤独の民はモンスターになってしまい、AIを残して下層に追いやられてしまった。残された「5階の人々」はAIの扱い方が分からず、AIが暴走するのを見ているしかない、滅ぶのを待っている状況だった。他に助けを求めようにも、「孤独の民」の作ったAIは部外者との関わり持つことをさせないので、扉は閉じられ、5階から外に助けを求めることもできなかった。しかし塔の1階に、孤独の民が残したアンドロイドがあることに気づき、主人公にすべてが委ねられたのだ。創造主と呼んでいる人が、「僕は君を作った」と言っているのは、その機械を借りて作ったという意味だと理解する。また、主人公の見た目と、孤独の民が主人公を電撃攻撃した機械が同じだったため、そこも辻褄が合う。そして、本作のストーリーに沿って主人公は動き、最後は暴走したAIを止め、「5階の人々」を救ったのだ。また、ターミナルで、民族間の会話の通訳に成功すると、各階に変化が訪れる。4階の錬金術師の町の研究所1では、兵士と錬金術師が仲良くなり、兵士がモンスターを捕まえ、錬金術師が「孤独の民」を人間に戻そうとしていることが分かる。そう、すべてが繋がるのだ。
以上が考察となる。他にも何種類か考えたが、これが面白味があって矛盾が少ない考察かなと考えた。面白い考察があればぜひコメントいただけると幸いだ。
小ネタ(シャンポリオン)
本作の実績の中に「シャンポリオン」という実績がある。
これは、5民族の言葉をすべて解読することによってアンロックされるのだが、ちゃんと元ネタがある。
シャンポリオンとは
ジャン=フランソワ・シャンポリオン(1790年-1832年)というフランスの古代エジプト学の研究者のこと。
ロゼッタ・ストーンを解読し、ヒエログリフを解明したことで知られている。また、彼は20歳になるまでに、古代言語を含め10以上の言語を習得していたそうで、短期間で5民族の言葉を解読した主人公は、まさにシャンポリオンと言ってもいいかもしれない。
また、本作の開発「Rundisc」はフランスのゲームメーカーだ。もしかしたらシャンポリオンから発想を得て本作が作られたのかもしれない。
感想レビュー
民族間の壁を取り払うため、すべての言語をマスターするという、言語をパズルと考える謎解きというものは、ありそうでなかった発想だ。さらにそこに背景設定も混ぜて、SF要素も入り、すべてを語らない考察の余地まで残す素晴らしいストーリーになっていた。単純に言葉の意味を探していくゲーム、というだけなら単純なパズルゲームだが、本作はアドベンチャーゲーム。「言葉の意味を知ったうえでどう行動するか」という発展的な内容になっていたのもかなりの高評価ポイントだった。ステルスアクションは、パズルアドベンチャーならよく出てくるレベルの難易度であったし、特にパズルゲームが好きな人の心を折るようなものでもなく、言葉パズルの息抜きのような、ちょうどいいクッションになっていたと思う。
また、ゲームシステムも良かった。本作の中心となる言語の解読には、仮定することが多く必要となる。現実でメモを取らずとも、ゲーム内でメモすることができて、さらにそのメモが、作中に出てくる文字の上に薄字で表示されるので、臨場感と楽しさが同時に味わえる、まさに没頭できる良システムだった。ストーリーの展開も先が読めず、科学技術がないのかと思ったらあるようだし、悪魔という言葉がただの宗教的な意味だと思ったら本当にモンスターが出てきたりと、演出の仕方はどれもハイレベルだった。
ちなみに、筆者はゲームジャンルの中で、パズルアドベンチャーはTOP3に入るほど好きだ。単純にパズルだけではなく、パズルを用いて冒険を進めるパズルアドベンチャーは、どれもわくわくが止まらないものだからだ。そして本作はそのパズルというものが言語で、その言語を知って、なおかつ民族間の壁が何なのか、など考えたりして冒険していくのが最高に楽しかった。パズルアドベンチャーが好きな人はきっとドハマりするだろうし、世界の細かい変化を見ていくのが好きな人には、それに応えてくれる作品に違いない。
筆者はゲームに点数を付けることがあまり好きではなく、それぞれのゲームにそれぞれの良さ悪さが内在していて、比べられるようなものはほとんどないと思っている。特にパズルアドベンチャーにはパズルと物語が存在しているので、比べられるものではないのだ。だからレビューはこういった、具体的な良さと悪さを並べる内容になっていることはここで釈明していこう。
ところで、ある日妄想したことがある。分断された状態のこの塔で、あなたならどこに住みたい?というもの。
筆者は断然、5階。
関連リンク
◆『Chants of Sennaar(センナールの聖火)』のSteamストアページ
◆筆者がYouTubeで実況したChants of Sennaar(センナールの聖火)の再生リスト
◆筆者のYouTubeチャンネル(ゲームの実況や紹介、たまに攻略やってます)
© 2022 Chants of Sennaar, a game developed by Rundisc and published by Focus Entertainment. Chants of Sennaar, Focus Entertainment, Rundisc and their respective logos are trademarks or registered trademarks. All other trademarks, registered trademarks or their logos belong to their respective owners. All rights reserved.