基本情報
ゴーストバスターズ フローズン・サマー(2024)
原題:Ghostbusters: Frozen Empire
製作国:アメリカ
監督:ギル・キーナン
製作:アイヴァン・ライトマン、ジェイソン・ライトマン、ジェイソン・ブラメンフェルド
脚本:ギル・キーナン、ジェイソン・ライトマン
原作:『ゴーストバスターズ』(1984)
出演:ポール・ラッド、キャリー・クーン、フィン・ウルフハード、マッケナ・グレイス
あらすじ
オクラホマからニューヨークに移り住んだフィービー・スペングラー(マッケナ・グレイス)と母のキャリー(キャリー・クーン)、兄のトレヴァー(フィン・ウルフハード)、そしてキャリーの恋人ゲイリー(ポール・ラッド)。一家はかつてのゴーストバスターズの本拠地である元消防所に住み、新たなゴーストバスターズとして活動していた。
しかし、以前よりゴーストバスターズと因縁があった市長は、未成年であるフィービーの労働を問題として指摘し、彼女の活動停止を要求。フィービーは反発するが、市長命令には逆らえず業務から外されてしまう。
作品紹介
『ゴーストバスターズ』(1984)の正式な続編として2021年に制作された『ゴーストバスターズ/アフターライフ』。そこから更に続く二作目がこの『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』である。
2024年4月現在、ネトフリでは旧作二作から『アフターライフ』まで配信中だ(女性メンバーでリブート版の2016年版『ゴーストバスターズ』もある)。また、Amazonプライムでも無料ではないものの上記全てを見ることができるので、未見の方はぜひ。
ざっくり感想(ネタバレなし)
昔の人気作品の続編を作るというのは、結構リスキーなことだと思う。単に人気作の続編を作るだけでも期待値が高いぶん難しいのに、昔の作品のスピリットを継承しつつ、新旧のファンを満足させなければならない。
本作は、前作で焦点が当たっていたスペングラー家の葛藤や問題がほぼほぼ解消されているため、前作ほど深みのあるドラマはないものの、ファン向けのエンタメ作品としては上出来の部類に入るのではないだろうか。
前作はどちらかというとジュブナイル作品という趣きだったが、今作はファンサービス寄りと言っていい。新世代のゴーストバスターズが正式に活動。しかも舞台は旧ゴーストバスターズの本拠地ニューヨーク。懐かしのあの元消防署からサイレンを鳴らして車両ECTO-1が街を疾走するのを見ると、ノスタルジーに頭を殴られる感じがする。
もちろん大元の『ゴーストバスターズ』(1984)を知らずとも楽しめるとは思うが、かなり勿体ないのは間違いない。ちなみに『アフターライフ』をすっ飛ばしてこちらだけ見るのは訳が分からないというか話に乗れないと思うのでおすすめしない。
解説的なもの(ネタバレあり)
前作『アフターライフ』で、故イゴン・スペングラー博士が命を懸けてゴーストバスターズとしての責務を果たしたことを知ったスペングラー家。新生ゴーストバスターズとして、かつてのゴーストバスターズが本拠地にしていたあの元消防署を自宅兼本部に改装し、今度はファミリーでゴースト退治に励んでいる。
ファミリーとしての団結を固めたスペングラー家の母と兄妹だが、そこに今回しれっとくっついているのが、キャリーの恋人となった元教師のゲイリーだ。
どうも正式に結婚したというわけではないのか、一応家族ポジションではあるものの、特にフィービーとは微妙な距離感がある。本当の父親のようにガツンと叱ったり注意したりすることができず、気を遣ってしまうのである。
しかし彼は、「家族(ファミリー)っていうのは血の繋がりは関係ない、自分の居場所なんだ」的なことを、フィービーにというよりは自分に言い聞かせるように言う。フィービーにドア越しに真剣に語りかけているつもりが、ドアの向こうの部屋は実際のところ無人なので、シーン的には笑える場面ではある。しかし、この台詞は今作に通底する重要なキーワードでもあるように思える。
つまり、血の繋がりがない彼らが「ファミリー」たりえるのと同様、かつてのゴーストバスターズたちもまた「ファミリー」なのである。今作のラストでは、旧ゴーストバスターズのベンクマンとレイ、ウィンストンと共に、事務員だったジャニーンもユニフォームに身を包んで敵に立ち向かう。
旧メンバーの中で特に出演シーンの多いレイ。彼は老後になってもオカルト書店を営み、ポッドキャスト少年と一緒にオカルト番組を収録したりなど、今でもオカルトどっぷりの生活を送っている(H.P.ラヴクラフト協会に所属しているとかいう研究者の友人も出てくる)。しかし調査の過程で子供たちを危険に晒したために、ウィンストンに「別の老後の楽しみ方を見つけろ」と諭される。
しかしそのウィンストンはといえば、超常現象研究センターを設立し、研究員を集めてゴーストの研究を行っているのである。やっていることは一緒なのだ。二人とも過去を忘れられず、違う形でゴーストバスターズとしての活動を続けている。ちなみにベンクマンは呼びつけられるとふらっと現れるので普段何をやっているのかよく分からない。相変わらずマイペースなのだが、研究センターでの実験に付き合ったりもしているようだ(実験方法は昔と変わらずうさんくさいが)。
無駄に長くなってきたので無理矢理まとめてみると、血が繋がっていてもいなくても、ましてや役に立っているかどうかなんて悩む必要などなく、何年経っても帰れる居場所。それこそがファミリーと呼べるものなのである。
補足:新キャラクターとゴーストたち
ちなみに新キャラクターも何人か登場する。
一人目のキーパーソンとして、ゴーストバスターズから外されて夜の公園でしょんぼり一人チェスをするフィービーの元に現れたゴースト少女・メロディがいる。やたらチェスが上手く、ちょっと斜に構えたゴーストと、コミュニケーションがちょっぴり下手くそだけど誠実なフィービーのささやかな友情は、ちょっと切ないが微笑ましい。
そして二人目のキーパーソン・ファイアーマスターことナディーム。ちゃらんぽらんな生活を送っているちゃらんぽらんな感じの青年だが、今作のラスボス・邪神ガラッカの宿敵であるファイアーマスターの一族の子孫である。彼はあまり仲の良くなかった祖母が、一族の使命として邪神の封印を続けていたことを知り、自らも立ち上がる。まあガラッカが復活した一因は、彼が封印のオーブを売っぱらってしまったことにもあるのだが……。
個人的な一押しは、ウィンストンの研究所に所属する科学者ラーズである。キャストはジェームズ・エイカスター、本作が映画デビューとなるイギリスのコメディアンだそう。眼鏡でちょっと神経質っぽい雰囲気で、「イゴン・スペングラータイプの発明家」のキャラクターとして海外メディアで紹介されていた(記事冒頭の写真の真ん中の金髪眼鏡がラーズだ)。もしこのシリーズがまだ続くなら、次回作にもぜひ登場してほしい。
もちろんゴーストたちも色々いる。冒頭に登場する下水道のゴーストドラゴンとか、研究所に収容されている色んなゴーストとか。
ミニマシュマロマンもたくさん再登場する。今回も笑顔で自分たちを破壊しまくっている。狂気を感じるが(ちょっと目がプラナリアに似てない?)やっぱりかわいいのである。ぷにぷにのフィギュアとかがあったら欲しい。
あとは、パンフレットの表紙でなぜか味方のような顔をしてゴーストバスターズの間に挟まっているスライマー(緑のやつ)。旧作『ゴーストバスターズ』に登場した奴は、なんと消防署の屋根裏でお菓子を貪り食いながらしぶとく生き残っていた(ゴーストだけど)。旧作といえば、序盤でレイを襲った図書館のゴーストも懐かしの再開を果たす。ちなみにゴーストバスターズはニューヨーク市立図書館から出禁を食らっていたらしい。
そして本作のラスボスは古代の邪神的な存在・ガラッカだ。恐怖で人を物理的に凍り付かせたり、氷柱を生やしまくったりしてくるおっかない見た目の奴である。でもこれはゴーストバスターズなので、古代の邪神とかいうめちゃめちゃ強そうな敵でも結構あっさり倒してしまうので安心してほしい。いたるところから氷柱が生えてきたら普通は血まみれの地獄絵図になると思う。
まとめ
自分は年代的にリアルタイムで旧作を見ていたわけではないのだが、『ゴーストバスターズ』にはなぜだかとてもノスタルジックな魅力を感じる。もちろん80年代の映画なのだから、現代から見てノスタルジックなのは当たり前なのだが……。魅力的なキャラクターとゴーストの造形や演出、そしてゆるい世界観は、当時から人気だったのも頷ける。ああいう何も小難しいことを考えず見られる映画は世の中に必要なのである。
そして、今作『フローズン・サマー』にもそのゆるさは健在だ。特にファンサービスに傾いたと言える今作は、ファン向けであるという点から万人に対して高い満足度を約束できるとは言わないが、少なくとも旧作が好きな人にはぜひ見て欲しい作品である。ニューヨークを駆け抜けるECTO-1のあのサイレン、軽快に始まるあのテーマソング……。もちろん『アフターライフ』から見始めて今作も気に入った方には、ぜひとも旧作の視聴をおすすめする。
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