ホラー(映画) 映画 映画感想

『クワイエット・プレイス:DAY 1』(2024)のネタバレ・感想レビュー【ホラー映画】

一乃

ホラーと本と映画と猫とレオパが好きな者です。

基本情報

クワイエット・プレイス:DAY 1(2024)
原題:A Quiet Place: Day One
製作国:アメリカ
監督・脚本:マイケル・サルノスキ
原案:ジョン・クラシンスキー、マイケル・サルノスキ
キャラクター原案:ブライアン・ウッズ、スコット・ベック
出演:ルピタ・ニョンゴ、ジョセフ・クイン、アレックス・ウルフ、ジャイモン・フンスー

あらすじ

末期がん患者のサミラ(ルピタ・ニョンゴ)は、猫のフロドと共にニューヨークのホスピスで暮らしていた。看護師のルーベン(アレックス・ウルフ)に説得されてマンハッタンへショーを見に行くグループに参加したサミラだが、突如街に隕石のようなものが襲来。未知の生物が人々を襲い始め、街は大パニックに陥る。


↓シリーズ1作目・2作目はアマプラで鑑賞できます。「DAY 1」とストーリーの繋がりはないのでどちらから先に見てもOK。

¥407 (2024/06/21 00:30時点 | Amazon調べ)
¥407 (2024/06/20 23:15時点 | Amazon調べ)

作品紹介

ずっと待っていた『クワイエット・プレイス』シリーズの新作!
今度は1作目・2作目とは異なる時系列の「1日目」の話ということで楽しみにしていた。シリーズを観ていない方のために軽く説明すると、目は見えないが音にめちゃくちゃ敏感で超獰猛なクリーチャーが地球にやってきて、人間が殺されたり立ち向かったりする話である。1・2作目は、既にクリーチャーがそこかしこに潜んでいる中、生き残ったとある家族が命がけでサバイブする物語だった。一方今作は、世界(というかアメリカ)にクリーチャーが初めてやってきた、まさにその初日を描く物語となっている。

ちなみに楽しみにしていたといえば日本版のキャッチコピーである。
1作目『クワイエット・プレイス』のキャッチコピーは「音を立てたら、即死。」
2作目『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は「音を立てたら、超即死。」
ときて今回は、遂に「音を立てたら、即即死。」だそうだ。こうなったらどこまでこの流れでごり押しできるのか気になってしまう。

今作の監督は1・2作目のジョン・クラシンスキーから変わりマイケル・サルノスキという方で、今作が長編映画監督2作目とのこと。1作目は『PIG』というニコラス・ケイジ主演作らしく、こちらもちょっと気になる。
そして主演はルピタ・ニョンゴで、やはり演技が素晴らしかった。あと猫。今作はなんと家族映画ではなく猫映画なのである。宣伝で言われていた(気がする)ので言いますが猫は無事です!なので安心して観よう。

↓シリーズ2作目『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の感想はこちら!

こんな人におすすめ

・クリーチャーによるパニックムービーと人間ドラマ、両方楽しみたい人
・大都市が荒廃している風景が好きな人
・猫が好きな人

今作は1・2作目のような既に荒廃した世界ではなく、そこに至るまでの過程が楽しめるので、大都市が破壊されまくり人々がいなくなりつつある風景を堪能できる。冒頭では人でごったがえしていたニューヨークがクリーチャーに襲われ、あっという間に廃墟都市みたいになる様はなかなかのスペクタクルで見ごたえがある。
あとは何はなくとも猫である。猫がかわいい。猫はかしこい。猫は癒し。

ざっくり感想(ネタバレなし)

1・2作目は家族が力を合わせてクリーチャーから逃れながらも立ち向かおうとする、どちらかというとアツい系のストーリーだったのに対し、今作はどちらかというとウェットな雰囲気のストーリーになっている。

というのも、映画冒頭ですぐに明かされるように、主人公のサミラ(通称サム)は末期がんに侵されており、既に余命僅かなのである。クリーチャーには殺されたくないが、そう遠くない未来に死ぬことは確定している。そういう状況で、サムが何を目的とするのか、そしてそれは果たされるのか——というのがストーリーの主題となっている。
クリーチャーがやってきて間もない状況のため、やつらと戦うことはなく、ひたすら隠れて逃げるのみ。どちらかというとクリーチャーはバックグラウンド的な存在になっているため、前作のように緊張感あるバトル展開を求めていた人は肩透かしを食らうかもしれない。
個人的には、これはこれで味変的な感じで楽しめた。というか泣いた。

あとお知らせしておきたいのは、パンフレットがないです!!な、なんで!?即完売とかではなくそもそも存在しないです!!
ミニシアター系の映画だとたまにあるけど、これだけばんばん宣伝している映画でパンフレットがないのは理解しがたいなあ。勿体ない……猫ちゃんの写真を愛でたかった……。

ストーリー解説・感想(ネタバレあり)

崩壊する世界で、ピザを食べにゆく

上で言及したサムの目的とは、ハーレムにある思い出の店「パッツィーズ」にピザを食べに行くということである。
何を言っているんだと思ったかもしれないが、まあ聞いてほしい。大量に飛来したクリーチャーたちにあっという間に街が破壊され、ちょっとでも音を立てた人々が速攻で狩られる姿を目撃し、極限状態に放り込まれたサム。なんとか人々が避難した劇場へと逃れ、看護師のルーベンと再会したものの、そこで彼女が出した結論とは「ピザを食べにハーレムに行く」というものだった。

サムにとって、「いつ死ぬか分からない」というのは日常と隣接する思考だった。そこにきてこのアポカリプスだ。同じ「いつ死ぬか分からない」でも、みすみすクリーチャーに殺されるよりは、最期にやりたいことをやり終えて死にたい。そしてサムは、軍の手配した避難場所に殺到する群衆の波に一人(+一匹)逆らい、亡き父親との思い出が詰まったピザ屋を目指す。

道すがら、猫のフロドが生存者のエリック(ジョセフ・クイン)を発見してサムのところに連れてくる。エリックはイギリスから来た法学生で、あまりの出来事にパニクっており、サムに引っ付いて彼女が元々住んでいたアパートまでついてくる。
サムはアパートで一晩明かした後エリックを置いて出ていくのだが、やっぱりついてきたエリックと何やかんやで一緒にハーレムを目指すことに。この二人の距離感もまた絶妙で、赤の他人同士がたまたま行動を共にしているわけだが、さりげない気づかいや思いやりに満ちており、また変に恋愛要素をかもしだそうとすることもない。

冠水した地下鉄の通路で溺れかけたりしながら(クリーチャーは水が苦手なので溺れる。ところで何で水が苦手なんだろう……)なんとかパッツィーズに辿り着いたものの、店は荒れ果てており到底ピザが残っていそうになどない。しょんぼりしたサムだが、とりあえず近くにある思い出のジャズバーに行くことに。ピアニストだった父親がかつて演奏していた店である。
ここで気を利かせたエリックは、近所の別のピザ屋でピザを発見し、容器の蓋に「パッツィーズ」と書いてサムに手渡す。めちゃめちゃいい奴じゃん……。もちろん猫のフロドもちゃっかりいただいている。ところで今書きながら気付いたのだが、自分がサムだから猫の名前がフロドなのだろうか……(指輪物語の登場人物の名前)。

最終的に、近くの桟橋から脱出の船が出航しようとしていることに気が付いた二人は、船を追って水際に集まっているクリーチャーたちから隠れながら近くまで向かう。サムはまたパニックに陥りそうになるエリックを落ち着かせ、フロドを託す。そしてエリックが無事に船まで辿り着けるよう、車の窓を割りまくってクリーチャーの注意を引きつける。
フロドを抱えたエリックは必死に走り、クリーチャーたちを辛くも振り切って海に飛び込む。そこには序盤でサムを保護してくれた男性、アンリ(ジャイモン・フンスー)もいた。彼は唯一シリーズの他作品と共通で出てくる人物である。『破られた沈黙』では生存者たちの島の長として皆を統率していたが、今回もリーダーシップをばりばり発揮している。

エンディングは胸に迫るものがありつつ、印象的で美しい。サムが何かが吹っ切れたような表情で、廃墟と化した街を音楽を聴きながら歩いている。ふいに、彼女はiPodに繋いでいたイヤホンを外す。清々しい表情のサムの背後に一体のクリーチャーが降り立ち、暗転。

抒情的なパニックムービー(と、猫)

前述したが、純粋な(?)パニックムービーを楽しみにしている向きには、人間ドラマというか主人公にフォーカスしすぎてちょっと不満を覚えるかもしれない。しかし個人的には、「DAY1」をサムという一人の女性の視点で描いた物語であると捉えればそんなに違和感はない。

サム演じるルピタ・ニョンゴの演技力は言わずもがなだが、一緒に行動するエリックも多くは語らないものの深みのあるキャラクターだった。思ったより早くリタイアしてしまった看護師のルーベンが『ヘレディタリー』のアレックス・ウルフだったことにはWikiを見て初めて気付いた。いつの間にそんなに大人になっていたんだ……。
あとは『破られた沈黙』の方にも出てきたアンリが登場したのも嬉しかった。初日のニューヨークはやばかったという話をしていたのが前振りだったのかもしれない。序盤でクリーチャーを隔離するためにマンハッタンから繋がるあらゆる橋が爆破されるのだが、それを見て「みんな死ぬんだウォーーーー!!」とパニックになった男の口を必死で塞ぐシーンはよかった。ちなみに男はどうやっても黙ろうとしないのでうっかり頭をカチ割られてしまう。

あとは猫!何はなくとも猫!
サムが連れている猫のフロドは本当にお利口さんで、抱かれている時は大人しくじっとしているし、トートバッグに入れられてもじっとしているし、リードでつながれている時はちゃんと一緒に歩いてくれる。フロドを目で追いすぎて、たまにサムがいるのにフロドがいないシーンがあると物凄く心配してしまった。でもサムの元から離れても必ず戻って来てくれるのである。それに昔住んでいた家のこともちゃんと覚えている。かしこい。
他にも地下鉄の通路で溺れかけていたエリックを見つけてサムの元まで誘導したり、サムのために一人で薬を探しに行ったエリックについていったり(ゴロゴロで元気づけてくれる)もする。猫らしく高所に勝手に上って回収されたりもする。ネズミも追いかける。びしょびしょになっても文句を言わない。か、かわいい……とにかくかわいい……。
それに何より、フロドはこの破滅的な状況においてセラピー猫としての役割をしっかり果たしている。定期的にサムはフロドを吸うし、パニック状態になっていたエリックもフロドを渡されたら吸って落ち着く。猫は吸うものである。ちなみにフロドは二匹の猫ちゃんが演じているそうで、ちゃんとスタッフロールにも二匹分の名前が書かれている。

今作はクリーチャーとの正面切ってのバトルはないものの、音につられて大挙するクリーチャーたちの数は今作が一番多くて迫力がある。ヘリに引き寄せられて一斉に高層ビルを上っていく姿はなかなか気持ち悪い。
あとはやっぱり、これは映画館で観るべき映画だと思う。騒がしい街の雑踏、音がするような静けさ、息をひそめて進んでいく時の微かな物音など、映画館の音響の恩恵をばっちり受けられる映画である。

今後のシリーズ展開と猫ちゃん

先日投稿した『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の記事でも紹介したが、『クワイエット・プレイス』のゲームも今年中に出るらしい。シリーズ本編の方の続編は2025年公開に向けて準備中とのことなので、まだしばらくはこの世界観が楽しめそうだ。

果たしてそのうちクリーチャーは撲滅されるのか?というかアメリカ以外の国は一体どうなっているのか?この世界の軍がもうちょっとちゃんと仕事をする日はくるのか?謎と期待は尽きないので、引き続き楽しみに展開を待ちたいと思う。
それでは最後に猫ちゃん映像で癒されてください。

一乃のX(Twitter)はこちら

-ホラー(映画), 映画, 映画感想