本記事では、クリアプレイ済の筆者が
◇前半ではゲームの概要から魅力・どんな人におすすめ?をご紹介
◇後半ではネタバレありの考察・解説・元ネタ・感想レビュー・エンディング紹介などのパートを設けています
既プレイの方も未プレイの方も是非ご覧ください。
※本記事は恐怖画像や恐怖描写などの表現を含むため、苦手な方はご注意ください。
『The Backrooms 1998 - Found Footage Survival Horror Game』の基本情報
開発 / 販売元 | Steelkrill Studio |
対応機種 | Steam |
価格 | ¥1010 |
ジャンル | ホラー / ファウンド・フッテージ |
プレイ人数 | 1人 |
発売日 | 2022年5月26日 |
コピーライト表記 | © 2022 Steelkrill Studio |
ゲーム概要
The Backrooms: 1998 is a first-person found footage psychological horror survival game where it tells the story of a young teen after accidentally falling into the depths of The Backrooms in 1998. Roam freely, mark, explore and try unravel the story - however you are not alone. Don't scream.
翻訳:The Backrooms: 1998は一人称視点のファウンド・フッテージ・サイコホラー・サバイバルゲームで、1998年に偶然The Backroomsの深みに落ちてしまった10代の若者の物語が描かれる。自由に歩き回り、マーキングし、探索し、物語を解き明かそう。でもあなたは1人ではない、叫ばないように。
(Steamストアページより引用・筆者翻訳)
どんなゲーム?
『The Backrooms 1998』はファウンド・フッテージサバイバルホラーゲームだ。
10代の青年が不運にもThe Backroomsに迷い込んでしまい、危険な敵がうろつく場所を生き抜いて脱出を目指すストーリーとなっている。
この世界から脱出するためには、謎の写真に描かれたパーツをすべて集める必要があるが、敵に対する直接的な対抗手段はないため、パーツ収集は困難を極める。
戦うことはあきらめて、ロッカーやテーブルの下に隠れたり、戦略的に物音を出して敵を誘導して生き延びよう。
また、本作は他のゲームとは少し異なったプレイ方法でホラー体験をより楽しむことができるのも特徴的。
次のパートでは具体的に、その本作の魅力に迫っていこう。
The Backrooms(バックルームズ)とは?
2019年に海外のインターネット掲示板4chanにて投稿された、1枚の黄色い部屋の画像をきっかけに出来た都市伝説のこと。画像が投稿された後、その画像にまつわる詳細な背景ストーリーがレスポンスされたことによって、インターネット上で爆発的に広まることとなった。
詳しくは今後ジャンルについての解説記事を執筆予定だ。
ファウンド・フッテージとは?
撮影者が行方不明などとなったため、埋もれていた映像が見つかったという設定のフィクション作品のこと。第三者によって発見された (found) 未編集の映像 (footage) なので、ファウンド・フッテージと呼ばれている。フィクションのドキュメンタリー、いわゆるモキュメンタリーの中の1つのジャンルである。The Backroomsではその性質上、ファウンド・フッテージ系のゲームがわりと多いのも特徴的。
本作の魅力
特徴的なプレイ方法
本作で特徴的なのは
「プレイヤーの視点」「ボイス」「スプレー機能」「セーブシステム」の4点だ。
視点
プレイヤーの視点は主人公の青年が持つカメラから見える視界の一人称視点となっていて、常に傾いていたりドンドン揺れたりする。また、主人公のダッシュは異常に遅い。目で見るだけでは限界があるので、敵や自分の足音にも注意してゲームをうまく進めよう。
ボイス
本作はマイクをONにしてプレイすることによってより楽しむことができる。
というのも、作中に登場する敵はプレイヤーが物にぶつかった際に出る音に反応するだけではなく、プレイヤーの出す声にも反応して集まってくるのだ。ジャンプスケアが多い本作では、ボイスをONにすることによって難易度が跳ね上がってより臨場感が出ることだろう。気に入らない場合はマイクの接続を切ればOKだ。
スプレー機能
本作でサバイバルしつつ脱出するためには、迷宮のように入り組んだThe Backroomsの中を探索しなければならない。似たような景色が続くため、序盤で手に入るスプレー缶を使って壁にマーキングし、目印を作成して攻略していこう。
セーブシステム
本作のセーブは、不気味なテレビのスイッチをONにすることによってなされるが、1つのテレビにつきセーブは1回までしかできない。テレビの数も決まっているため、セーブのタイミングも重要となってくる。
尋常じゃない怖さ
ボイスをONにした上での本作の初見プレイは尋常ではない恐怖を覚える。
敵の造形もさることながら、追ってくる敵とは関係ない場面で突然仕掛けてくる数多のジャンプスケアで思わず声が出てしまいそうになるのに、その声を抑えなければならないのが非常にリアルなホラー体験となる。
また、ファウンド・フッテージなので画質もレトロなVHS風となっていて視界が悪く、更に恐怖をあおってくるスタイルだ。手に入る懐中電灯もバッテリー式なので、定期的に電池を拾わないと視界がさらに制限されてしまう。
恐怖の三段構え
本作はサバイバル系のホラーゲームの中でも高レベルな雰囲気となっているが、怖いのはジャンプスケアやThe Backroomsの雰囲気だけではない。
ネタバレとなるので詳細は下記のネタバレ解説パートで語るが、本作はストーリーの内容も、知れば知るほど身の毛のよだつ怖いものとなっている。クリア後にエンディングの意味が気になった方は、ぜひまたこの記事に戻ってきて解説を見てみてほしい。そこには三段構えの恐怖が用意されている。
どういう人におすすめのホラーゲーム?
本作は、質の高いサバイバルホラーゲームを遊びたい方におすすめのゲームだと言える。
純粋なホラーゲームとしてのクオリティの高さもさることながら、クリア後に知ると青ざめるであろう、作中に隠された数々の伏線がどれも秀逸で、とても一人で作ったとは思えないレベルのホラーゲームとなっている。個人的にThe Backrooms系のゲームは数多く遊んできたが、間違いなく1番怖かったのが本作である。また、クリア時間は人にもよると思うが、サバイバルホラーが得意な人なら1時間で、慣れない人でも3時間あればクリアは可能となっている。
エンディング紹介・解説(元ネタっぽい事件解説・ネタバレあり)
エンディング到達条件
エンディング到達条件は、ゲームをスタート後すぐに見つかるこの写真の、赤丸で印がされたパーツ6つを集めることである。
- Toy Green Car(緑の車のオモチャ)
- Yellow Rain Jacket(黄色いレインコート)
- Family Picture Frame(家族の写真立て)
- Red Beanie(赤いビーニー帽)
- Jewelry box with padlock(南京錠付きジュエリーボックス)
- Children's Backpack(子供用リュックサック)
の6つを集めよう。ちなみに南京錠の暗証番号は473だ。
エンディング内容
残酷な描写が多く含まれるため、苦手な方は注意。
6つのアイテムを集めると、背後から敵に手で捕まえられエンディングに突入する。
オープニングで見たVHSテープの動画がもう一度再生され、再生が終わると急速にその動画が巻き戻される。巻き戻しが終わると、黄色いレインコートを着た子どもが森の中を走る映像が少しの間流れる。その後黒塗りの背景に英語のテキストが表示され、プレイヤーは事の真相を知ることとなる。テキストの表示が終わると、さらに3枚の写真が表示されエンドロールとなりゲームは終了する。
以下が表示されるテキストと、表示されるメッセージ付きの3枚の写真だ。
◆表示されるテキストの翻訳
トーマス君の衝撃的で陰惨な発見からほぼ1週間が経った。彼が最後に目撃されたのは、帰宅途中に歩いているところだった。誘拐された可能性が高い。彼の両親は犯人に息子を解放するよう嘆願した。彼の大好物であるスパイシーフライドチキンを作ってあげるからと。
トーマス君の遺体は2日後、地元の森の近くで発見された。彼はお気に入りの黄色いジャケットとジーンズを身に着けていた。誘拐されたときと同じ服を着ていた。しかし、彼の両腕と頭は体から切り離されていた。トーマス君は誘拐され、拷問を受けた可能性が高いと言われている。切断された頭部は遺体の近くで発見されたが、両腕は少し離れた場所で発見された。
検視の結果、ハンマーなどの鈍器で気絶させられたことが判明した。また、トーマス君は両腕が遺体から離れた場所で発見された理由を説明できる。おそらくトーマス君は腕がないまま走り回り、数分間両親に助けを求め走り回ったが、甲斐なく出血で意識を失ってしまった。犯人が彼に追いつき、首を切り落としたのはその時点だった。解剖の結果、彼の最後の食事はスパイシーフライドチキンだった。
表示されるテキスト画像2枚目
リアム・ウィリアムズ(18)とドレイク・サルバトーレ(19)が、リトル・トーマスの誘拐、拷問、残忍な殺人容疑で起訴された。それは、警察がポール・ハートのものと思われるVHS映像を見つけたことによる。そのVHS映像はポール・ハート(19歳)がスケートボードで転倒して入院し、その数分後に怪我がもとで死亡したあとに発見された。
VHSの映像には、トーマス君の誘拐、監禁、拷問、そして残忍な殺人に関与した全員の姿が映っている。彼らはトーマス君に対してそれほど悪くはなかったと供述しており、殺人が行われる前には彼の好物を食べさせていた。
リアムとドレイクはこの犯罪により死刑判決を受けた。ポール・ハートはスケートボード事件で死亡。
◆3枚の写真のメッセージ翻訳
「お気に入りのランチを食べた後、お気に入りのジャケットを着た小さなトーマス。愛しているわ。」
「殺人者の一人、ポール・ハートが事故に遭った場所には、彼の血の一部が今でも目に見える。」
リアン・ウィリアムズ、18歳
ドレイク・サルバトーレ、19歳
ポール・ハート、19歳
また、エンドロールの上部には開発者からのメッセージが書かれている。
それを翻訳すると
「現実世界は、モンスターがいる場所だ」
という内容になっている。
以上がエンディングのすべてだ。
次にその内容をまとめた解説と、本作の元となったと思われる実際に起きた類似する事件について見てみよう。
エンディング解説
◆本作のストーリー(フィクション)
オープニングでは、友達2人とスケートボードで遊んでいた青年ポール・ハートがこけた際にノークリップ(現実から外れ落ちてThe Backroomsへ行くこと)してしまい、The Backroomsから脱出を目指すという内容で物語が進行していた。
ところがクリアしてみると、実際ポールはノークリップしたワケではなく、その事故が原因ですでに死亡しており、事故の捜査から本件の証拠となるVHSテープが見つかり、トーマスという子どもの殺人事件に関与していたことが判明する。
その事件の内容はとても残虐であった。まずハンマーなどの鈍器で叩いて気を失わせ誘拐し、監禁、そして犯行の前にトーマスの大好物であるスパイシーフライドチキンを食べさせる。その後両腕を切り落として一度逃がし、両親に助けを求めながら意識を失い倒れ、犯人がトーマスに追いつくと、首と胴体を切り離すというものだった。また、両腕は遺体から少し離れた場所から見つかった。つまり本作で追ってきた敵とは、トーマスだったということだ。
また、ポール以外の2人のリアムとドレイクは死刑判決を受けたが、「そんなにひどいことをしていない」と供述をしたという。
◆本作の設定に類似する現実に起きた悲惨な事件(元ネタ説)
「オークランド群児童殺人事件」
1976年~1977年の間で、アメリカミシガン州オークランド郡で少なくとも4人の子どもが殺害される事件が起きた。
本作と類似する点は、被害者が子どもという点、殺害される前にフライドチキンを食べさせられていた点、遺体が家を出るときの服装と同じ服装で遺体が見つかった(リュックサックも含む)点など、複数の被害者の特徴が本作のトーマスにまとまっているような具合だ。逆に共通しない点は、本件の主犯は捕まっていない未解決事件であること。
気になる方はWikipediaの
「Oakland County Child Killer」に詳しく載っているので閲覧してみるといいかも。(Google自動翻訳が便利)
以上から分かるように、筆者が冒頭で述べた本作の3段構えの恐怖とは、
The Backroomsの恐怖
本作のストーリーの恐怖
実際に起きた悲惨な事件との類似性
のことである。
ちなみに本作がリリースされた直後はトーマスの名前は愛称のティミーとなっていたが、現在ではアップデートされ正式名称のトーマスに修正されている。
考察(ネタバレあり)
◆パーツを集めたらゲームクリアだった理由
作中でトーマスはバラバラにされたことが判明する。遺体から少し離れた場所で見つかった両腕や、遺体の近くにあった頭部などをこの世界なりの方法で表現していたということだろうか。そして集めるパーツがバラバラだった理由はおそらく、このThe Backroomsの世界を煉獄として描写しているからではないだろうか。
◆The Backroomsを煉獄として捉えた作品
煉獄とは、天国と地獄の間に位置する、生前の罪を償うための中間的な世界のことであり、バラバラ殺人を行った犯人に罪を償わせるため、パーツを集めさせたのだと考えられる。つまり、元の状態に戻せということだ。また、終始手放さなかったビデオカメラも強い証拠となる。普通なら生き残るために少しでも機敏性をあげるためにカメラなんか捨てるだろうし、それを最後の最後まで手放せなかったのは、自分のやったことを思い出せ、償えという強いメッセージだったと推測できる。
◆ループする煉獄の世界
作中には、多くの壁のラクガキが存在する。英語の文章や矢印など、ポールを手助けするものから、少し脅す内容のものまで。それはおそらく、煉獄の世界をループするポールが、次のループの自分を応援するものや、気が狂ってしまったときに書いたものなど自分が自分に宛てたメッセージだったのだろう。はじめは仲間の2人もこの世界に来ていてメッセージを書いたのかとも考えたが、ポールがこの世界に来たタイミングではまだ2人は生きているので、おそらくポール単独の話だろうなと。また、エンディングでオープニングのVHSムービーが巻き戻されてしまったシーンは特に、ループしていることを示しているようにも見える。そしておそらく、ポールがこの世界に来たということは、残りの2人も煉獄行きになるのは確かだろう。ちなみにThe Backroomsはもともと脱出方法がない場合がほとんどなので、ここが煉獄という名前でなくあえてThe Backroomsであるとしたということは、この煉獄は終わりのないループである可能性は高い。
感想レビュー(ネタバレあり)
普通のThe Backroomsの世界とは一線を画した、ホラー演出とストーリーを織り交ぜた上質なホラーゲームであった。ジャンプスケアとマイクの合わせ技で臨場感と恐怖感を同時に演出したのはさすがだなと思ったし、実際に起きた未解決事件に類似した残酷なストーリーとThe Backroomsの不気味な世界はたしかにマッチしていた。また、カメラから見る視点は最悪で、揺れたりノイズが走ったり、そんな状況でグロテスクでトラウマ級の見た目をした敵が、子どものような笑い声を出して追いかけてくるのに、主人公の移動速度は極めて遅い。普通のアクションゲームであれば操作性の悪さは低評価に直結するが、ホラーゲームではうまくやればそれを逆手にとって良いゲーム性に変えることもできる。本作はまさにそれで、ホラーサバイバルゲームとしてあえてプレイヤーに不便さを感じさせて臨場感を演出しているのだ。よってインディーホラーゲームとしては紛れもなく高水準である。
一方「The Backroomsゲームとしてみるとどうか?」ここではそれもしっかり評価せねばならない。
そもそもThe Backroomsは現実世界からノークリップ(外れ落ちた)して行く裏世界であるので、死後の世界という本作のオチと、The Backroomsの世界観が決定的に矛盾してしまっているので、本作は本当にThe Backroomsなのか?という疑問がどうしても出てしまう。また、階層はレベル0のエントランスルームのみであり、MAPが広いわけでもないので、The Backroomsゲームとしては、本作は正直物足りないかなと思う。普通に裏世界だとか煉獄だとかで良かったのでは。
しかしやはりホラーゲームとして見ると、トーマスに関する物が散りばめられていたり、ポールがずっとカメラを持っている違和感など数々の伏線が用意されていて、しっかりオチで回収していったのは本当に見事であった。また、本作のオープニングなどでもそうなのだが、実写の写真や動画などが使われるホラーゲームは良作が多いと感じる。今年の4月に記事にした『11F』にしても、フィクションのストーリーに、これはもしかしてフィクションではないのでは?と思わせてくるのが面白いのかもしれない。さらに今回は現実の未解決事件と酷似しているので余計に怖かった。やはり悪いことはしてはいけないのだ。
関連リンク
◆『The Backrooms 1998 - Found Footage Survival Horror Game』のSteamストアページ
◆筆者がYouTubeで実況投稿した動画のリンクバックルームズで最も怖いと言われるゲームを遊んでみる【The Backrooms 1998 - Found Footage Survival Horror Game】
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