この記事では、『御祝呪 -oshukuju-』をクリア済の筆者が
◇前半ではゲームの概要から魅力・どんな人におすすめ?をご紹介
◇後半ではネタバレありの考察・エンディング紹介、感想レビューなどのパートを設けています
既プレイの方も未プレイの方も是非ご覧ください。
※本記事は恐怖画像や恐怖描写などの表現を含むため、苦手な方はご注意ください。
『御祝呪 -oshukuju-』の基本情報
開発 / 販売元 | TENJO GAMES |
対応機種 | Steam |
価格 | ¥1000 |
ジャンル | ホラー / ウォーキングシミュレーター |
プレイ人数 | 1人 |
発売日 | 2024年11月7日 |
コピーライト表記 | © 2024 TENJO GAMES |
ゲーム概要
これは、血縁に秘められた呪いと祝福の物語―― 見知らぬ天井の下で目を覚ました環子は、屋敷の中で倒錯した感情に触れながら出口を目指す。 ”経験できる小説”のようなアドベンチャーホラー。
(Steamストアページより引用)
どんなゲーム?
『御祝呪 -oshukuju-』は国産の一人称視点の
ホラーのウォーキングシミュレーターゲームだ。
団地で母と2人で暮らしていた主人公の「道川環子」は
ある日、見知らぬ天井の下で目を覚ます。
目の前には祖父、祖母、叔母、そして自分の遺影があり
さらに屋敷を進むと、怪しい儀式や信仰の片鱗が垣間見える。
'80~'90年代の日本家屋を舞台に繰り広げられる良雰囲気の脱出和ホラーゲームで
ゲーム性については、アクションやパズルなどの要素はほとんどない。
不気味な世界を歩きながら資料を集め
この世界について考えながら、脱出を目指そう。
あとエンディングミュージックがやけに力が入っている。
(あれ、1000円のインディーホラーゲームだよな?)
本作の魅力
80~90年代の和ホラー
和ホラーといえばこの年代だなとつくづく思わされる。
台湾ホラーや韓国ホラーにはない
独特の和ホラーの味を体験しよう。
もう明らかに呪われてる
壁いっぱいのレントゲン写真。しかも頭部のものばかり。
自分のものでも怖いし、他人でも怖い。
あなたはいったい、今どこにいるのだろうか。
ゲーム内資料が豊富
ゲームボリューム的には短編にあたるが、それよりも資料が多い。
資料を無視して進むとおそらく20分ほどでクリアできてしまうが、
資料を読んでいたら1時間ほど遊べるゲームだ。
クリア後に気になった方はぜひ下記考察パートも見てみてほしい。
どんな人にオススメのゲーム?
どんな人におすすめ?
- 和ホラーが好きな方
- 呪い系のホラーが好きな方
- ストーリー背景の凝ったホラーゲームが好きな方
『御祝呪 -oshukuju-』は和ホラーゲームだ。よくアジアンホラーは1つにまとめられて語られるが、実際にゲームや映画を体験してみると、それぞれに細かい違いがあることに気づく。中でも和ホラーは、人が人を呪おうとする作品も多い。そんな本作も呪いが関係した作品となっているので、和ホラーが好きで、特に呪い系が好きな方にはたまらないだろう。また、ゲーム内の資料も多いのでストーリー背景の凝ったホラーゲームが好きな方にもおすすめできる。一方、ボリュームのわりに値段が高いのでセールの時に買うのもいいかもしれない。ちなみに筆者のプレイ時間は、資料を読みつくして全エンドを見て1時間弱ほどだった。
下記パートからネタバレ注意
ストーリー解説・エンディング紹介(ネタバレあり)
ストーリー解説
母と団地で暮らす道川環子は、目を覚ますと自分や家族の遺影が飾られた不気味な屋敷に連れ去られてしまう。その部屋は、遺影の飾られた家族たちの部屋とつながっており、叔母、祖母、祖父の順に部屋を訪れることに。叔母の部屋では臭い金魚やミミズや養蜂箱が置かれていたり、祖母の部屋では、まるで自分を呪うかのような環子のへその緒や切断されたお守りなどがタンスに入っていた。祖母の部屋に厳重な鍵で封じられた隣の部屋では、悪魔が祀られていた。祖父の部屋では、一族を絶やした後悔がメモなどで綴られていた。そして祖父の部屋からつながる防空壕だった空間は改造されており、神様を祀る場所となっていた。神様に祀られた供物をどけ、小さくなってしまった地蔵を手に、環子は最後の部屋を訪れる。そこでは以下の通りエンディングが分岐し、結末を迎える。
各エンディング
エンディングの分岐条件は、最後にもう1度遺影たちが並べられた場所で自分(環子)の遺影を選択し、祖父、祖母、叔母の中から誰を選ぶかで3つに分岐する。なお、ロードですぐに戻ってこられるのでエンド全回収はすぐに可能な親切設計。
祖父エンド
条件
遺影を選択時、祖父の遺影を選択する。
内容
視点が遺影が並べられた机の奥の扉へと動き、「開かない・・・」となってエンドロールへ。エンドロール中もいくつか挿絵が表示され、そこでは日本人形が「神様」のいる部屋へと移動し、眠る様子が描かれる。
備考
エンドロール中、2/3と表示される。ノーマルエンドという意味なのかもしれない。
祖母エンド
条件
遺影を選択時、祖母の遺影を選択する。
内容
選択すると、祖父エンドでは開かなかった扉の向こうに行く。ところがドアは開かず、白い背景の中に「開かない・・・」と文字が表示されエンドロールへ。エンドロール中は、外の桜に手を伸ばす環子の手が、桜とともに朽ちていく姿が描写される。
備考
エンドロール中、1/3と表示される。バッドエンドという意味だと思われる。もしかしたら愛してた度かも。
叔母エンド(トゥルー)
条件
遺影を選択時、叔母の遺影を選択する。
内容
選択すると、祖母エンドでは開かなかったドアが開き脱出。ホワイトアウトし、母親と再会の言葉を交わしながらエンドロールへ。エンドロール中では、成長する環子の姿と、環子と月子(叔母)のツーショット写真が見られる。
備考
母親の顔も見てみたかった。
考察:エンディングの意味(ネタバレあり)
誰が環子を愛していた?
叔母の部屋では、資料の古書で「留意すること」と書かれた禁忌の供物を準備している様子がうかがえる。しかしこれはミスリードであり、環子を愛していたのは叔母の月子だった。月子は自分が頭が良くなく、一族からうとまれ、こびへつらいながら生きてきたことをメモに残している。さらにメモからは、月子が祈祷師と連絡を取り、一族を守ってきた神様の力を弱め、さらに祖母の玲子が傾倒する邪教グッズを利用して呪いによる一家心中を図っていたことも分かる。ところが月子は、自分と境遇の似た環子だけは犠牲にしたくなかったため、祖父の了司に環子を母親と2人で追放してはどうかとあえて打診し、環子を安全な距離に置いたのだった。また、邪教の祭壇にはほかの神様(十字架?)も祀っていたため、一族は呪われてしまったのだと思われる。(これが月子の言っていた禁忌の供物以外の別の手段。)
環子すら忌々しく思う玲子はまったく環子のことを愛していなかっただろうし、了司も日誌で「環子ももう終いだ。一族はもう呪われている。支度をしよう」と綴っていることからも、環子について絶望はしていても愛してはいなかったことが分かる。一方月子は、やろうとしたことは許されることではなかったとしても、自分と重なる環子のことだけは愛していたのである。
エンディングの意味
エンディングでは、選んだ遺影ごとに違う結末を迎えた。おそらくこの選択というのは、環子がその遺影の人物を愛した場合の結末を描いているものだと思われる。
祖母のエンディングについては、まさに絶望的な終わり方だった。あの場所囚われ続け、桜と共に朽ちていくだけ。あの家に囚われ、呪われ、あの場所で死んでしまう。
次に祖父のエンディングについては、環子は神様が置かれていた場所に移動し、何者かの手で安らかな眠りを迎えていた。玲子ほど殺意がなかったので、祖父は愛してるわけでもないし、嫌っているわけでもなかったのかもしれない。玲子に殺されるよりはマシな、あの家から出ることはできないが、せめて安らかに眠ったという表現に思える。
最後に叔母のエンディングについてはストーリー中の資料の通り、月子が環子のために環子を遠ざけ、因縁の家から離脱させることに成功する。そう捉えると、すべて辻褄が合うのではないだろうか。
なぜ7歳でさらわれた?
環子はオープニングでも書かれていたように、本作のゲームの世界に7歳の時点で祖父に連れられている。しかしあの世界は、すでに色々起こったあとの世界であった。これは環子が7歳の時点で、たまたま実家の近くと通り過ぎてしまった際に、残っていた呪いに連れ込まれたのではないかと考えている。これについては材料が少なすぎるのでほぼ予想でしかない。
感想レビュー(ネタバレあり)
一族にかけられた呪いと、その呪いから逃してくれた叔母の親切心がうるっと来る良ストーリーのホラーゲームだった。ゲーム性についてはアクションもパズルもない純粋なウォーキングシミュレーターゲームなので、ストアページにもあるように「経験できる小説」のような作品だったと言えよう。電ファミニコゲーマーのインタビュー記事を見ても、わずか3ヵ月でゲームを形にして、初心者向けのホラーゲームを作ったのだということが分かる。個人的にはストーリー序盤では、環子を突き放すようなミスリードをしておいて、実は環子を護るためだったというのはベタだが好きだった。幸せそうな2人の写真が癒される。
一方、やはりネックなのは価格だろうか。映画は映画館で見ると平等な値段をしているが、ゲームはそうではない。ほとんどの場合、全実績クリアまでの必要時間と値段はある程度相関関係にあって、本作の1000円という価格は、実際にはもう1時間ほど、合計2時間ほどのボリュームは欲しかったかなというのが正直なところ。ホラーの入門とするならば、やはり価格は500円ぐらいでないとなかなかプレイヤーたちは買ってくれないというのがつらい現実だ。(SteamDBの最高同時接続数は11月9日時点時で12)
個人的な総評は「もったいない」だった。
メジャーな妖怪や都市伝説を使い古してそれを追体験するだけのような、何百番煎じの作品なら記事にもしなかったが、本作はしっかり独自の世界観を持った作品だからこそ記事にした。資料を読んでいくとキャラクターたちの性格も見えてきたし、あえて細かすぎる描写はせずにボヤけさせて考察を捗らせてくれた。本作は入門というよりはウツロマユのようなストーリー背景が凝った、ホラーオタクを唸らせる作品になれた可能性があったはずだ。特にあのエンディングの曲のクオリティは2時間ぐらい遊んだ後の、まさに映画を見たあとの余韻に浸らせてくれるレベルの良曲だったし、オープニングやエンディングに用いられたイラストもレベルが高いものだった。環子や家族についてもう少し掘り下げながら、エンディングにもう少しムービーをつけて頑張ってくれたら化けたとだろう。まとめると、音楽やイラストのレベルとボリュームの乖離が強く、もったいない、というのが最終的な印象だった。次回作がもしあれば期待して待ちたい。
でも一番面白かったのは
玲子さんの殺意の高さ。
関連リンク
◆『御祝呪 -oshukuju-』のSteamストアページ
◆筆者がYouTubeで実況投稿した配信のアーカイブ動画【御祝呪 -oshukuju-】嫌なことしか起こらない新作の和ホラゲ
◆^ゲーム開発経験ゼロ”のイラストレーターがたった3ヵ月で短編和風ホラーゲームを開発!? 『御祝呪』のじっとりした恐怖が良い感じ。“古民家を丸ごと一軒”買って参考にするこだわりもすごい【TGS2024】
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