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『A Space for the Unbound 心に咲く花』の考察・感想レビュー

ひろてく

主にホラゲの考察や感想記事を書いてます。 ストーリー性の強い作品が好きで、たまに映画の感想記事も。

本記事では、トゥルーエンディングまで到達した筆者が

前半ではゲームの概要から魅力、このゲーム買うべき?をご紹介

後半ではネタバレありの感想レビュー・考察パートを設けています。
※エンディングの本当の意味も詳しく解説しています。

既プレイの方も未プレイの方も是非ご覧ください。

※本記事には抑鬱、不安に関する表現が含まれています。苦手な方はご注意ください。

『A Space for the Unbound 心に咲く花』の基本情報

開発 / 販売元Mojiken / Toge Productions
対応機種Steam / PS5 / PS4 / Switch / Xbox Series X/S /Xbox one
価格Steam:¥2,300
PS4 / PS5:¥2,860
Switch:¥2,860
Xbox Series X/S / Xbox one:¥2,860
ジャンルアドベンチャー / SF
プレイ人数1人
発売日2023年1月19日
ゲームインフォメーション

どんなゲーム?

『A Space for the Unbound 心に咲く花』は

インドネシアが舞台の
超能力が使えたり猫が喋ったりするSFアドベンチャー

主人公の男子高校生アトマと彼女のラヤの2人を取り巻くラブラブファンタジー……

だったら単純だったのだが、本作はそうではなく

アトマもラヤも超能力使うことができたり

空が割れたり

時間軸が飛びまくったりと、ワケがわからないことがよく起こる。

それでも1つ、分かりやすい目標があり、本作ではそれを完成させることが大きな目的となる。

それは2人で作った「やることリスト」

アトマの超能力「スペースダイヴ」を利用してやることリストを完成させよう。

スペースダイヴで他人の心の中に入っている様子

ちなみにアトマの超能力「スペースダイヴ」は、他人の心の中にダイヴすること。

みんなが心の中で抱える問題を解決して、物語を進めていこう。

本作の魅力

超能力や終末世界、猫も喋るなんでもありの急展開

本作を遊んでいくと、物語の展開のうまさにビビることだろう。

あれ、さっきまではあれ?あ、目の前で猫が喋って、あれ、あれ

みたいに脳がバグる。

良いネタバレをすると、ちゃんとゲームをクリアしたときには全てが分かるので安心してほしい。

しかし、敬語で喋る猫っていうのは、人間よりも知的に見えてしまうのはなんでだろうか。

高校生が高校生

高校生。

心が真っ直ぐで、人をあまり疑わない、困った人がいたら助ける、人として正しいあり方を知っている

そんな筆者の好きな高校生の姿がここにある。

みんな根は良い奴。道を塞いでクイズを出してきても、きちんと答えてあげよう。

やり込み要素もたっぷり、心が疲れた人に贈りたいゲーム

本作は、Steamで圧倒的好評だからおすすめしたいワケじゃない。

おすすめしても損しないからおすすめしたいワケじゃない。

最高のアドベンチャーがそこにあったからなのだ。

本作の大きなテーマは

人間が必ずといっていいほど直面する、人間関係についてだ。

本作ではそれが丁寧に描写されている。

なんだか心が疲れてしまったな、と思ってしまったときに

このゲームを遊んでクリアしたあなたは、きっと心が晴れているはずだ。

筆者の心は快晴になった。

やりこんでクリアしても良いし、そうしなくてもいい。

自由な楽しさがここにはあるのだ。

そうだよ、俺は泣いた

男泣きしたゲーム。プレイする前に見ていただいているなら、伝えたい言葉は次の一言だけだ。

お゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛おお゛お゛お゛お゛ん(涙)

アドベンチャーゲーム好きだけど買うべき?

マジで買った方が良い(おわり)

いや、それでは味気なさすぎる。ちゃんとお伝えしよう。

本作は13時間ほどでTrue Endまで到達可能だ。ボリュームに対する値段は十分だと思うし、何より押したいのは物語。1つの物語をここまで面白く描写できるのか、と感心しっぱなしだった。アドベンチャーが好きな人にも、ちょっと落ち込んでいる人にも、心が晴れる物語がここにはあるので、少しでも興味を持たれたならば、是非遊んでみてほしい。
やって良かった、みんなにも知らせたい!!と強く思ったので、久々に重厚なストーリーのゲームの記事を書くに至ったくらいに良かった。

考察(エンディング解説)(ネタバレあり)

さて、ここからは特大のネタバレありの考察パートとなる。

本パートでは先に物語全体の内容についておさらいしたあと、このゲームの、きっと皆が知らないインドネシアの文化の大前提をお伝えした上で解説していこう。これはクリア後の方も必見だ。

本作の物語について

本作の世界は、病気で倒れて意識を失ったラヤの心の中で、ラヤが大好きなインドネシアのロカ市を模倣した世界だ。だからラヤは超能力が使えるし、「魔法の杖」や「赤い本」にも超能力的な力が宿っていて、共作者であるアトマには使うことができた。一方、この世界はラヤが生み出したにも関わらず、ラヤのトラウマが強く根付いていて全てがラヤの思い通りにいくとは限らない。ラヤにとってのトラウマは、ラヤには完全に制御することはできず、「ルル」「マリン」「エリック」「アトマ」は制御下の外にいたため、トラウマを再現する形でラヤに襲いかかってくる。それはもう1人のラヤである「ニルマラ」の仕掛けたことで、ニルマラ本人も「あたしに気付づいてほしかった」からだと言っている。アトマや制御外の存在によって、自分の世界すら思い通りにいかないラヤの葛藤は大きくなり、やがては自分の世界すらも壊そうとしてしまい物語は終局を見せる。それはアトマとの決着ではなく、ラヤ最大のトラウマ、ラヤを虐待している父親との決着だ。アトマはラヤを励まし続ける。どれだけラヤに痛めつけられようが、ラヤの存在を肯定し続けてくれる。たとえ、自分がもう死んでいると分かった時でも、アトマは自分のことは気にせずラヤをひたすらに支えようとしてくれる。その甲斐あって、ラヤは父親に別れを告げることができた。ラヤは目が覚めたら病院のベッドで寝ており、母親がそのことに気付く。療養後、ラヤと母親は引っ越すことに。その描写が6章となり、現実のロカ市や人々の姿を目にする。問題を乗り越えたラヤは清々しい気持ちで本物のルル、マリン、エリックとしっかり対話する。その後、あの橋でエンドロールが流れ、ラヤはアトマが亡くなった場所へ行き、花を供え、アトマとお別れをし物語は終わる。

Normal EndとTrue Endの違いについて

Normal Endでは、アトマが亡くなった川に花を供えに行くシーンがなく、その直前の橋で、エンドロールが流れたらすぐにゲームが終了してしまう。一方、True Endではエンドロールのあとに、アトマが亡くなった川で花を供え、アトマとお別れするシーンが追加される。

True Endの到達条件について

考察パートではあるが、ついでにここに載せておこう。True Endは、やりたいことリストを全て埋めることで見ることができる。
具体的には
「音楽を聴いてギャン泣きする。」
「世界一モフモフの動物をなでる。」
「YOMANの5文字をすべて集める。」
の3項目を埋めたら達成できることだろう。もう攻略Wikiに達成方法は出ているので、知りたい方は攻略wikiを見ていただくといい。

ラヤとニルマラが分かれたことについての解説

本作をクリアして、少し疑問というか、腑に落ちなかったことはなかっただろうか。それはラヤとニルマラが、名前を分けた同一人物だったということだ。え、苗字と名前を分けたってこと?よく分からず、引っかかっていたので、筆者は調べてみた。すると驚愕の真実が浮かび上がってきた。

「インドネシアに姓の概念はなく、全てが名前。よって、インドネシアでは名前で家族と見分けることが難しい。」

マジで!?

いや、本当に驚いたのだが、それならラヤはニルマラだし、ニルマラがラヤっていうことも納得する。

ちなみにラヤ・フィトリ・ニルマラのフィトリもミドルネームとかではなく「名」らしい。また、名前の数の制限もないらしい。だから、分かれたのか。とても納得がいったのでブログで拡散することにした。

ん?じゃあフィトリはどこにいったんだ

考察

本来考察というのは、物語では描写されていないところを、前提事実から、1番そうらしい状態に理論的に補完することだ。しかし、本作ではほとんど説明されているため、重要なストーリー考察というものは難しい。しかし、その中でも考察したいと思ったのは、時間軸についてだ。ラヤが現実世界に意識が戻るまでの時間の流れがちょっと分かりづらいので、それについて少し考察をしたいと思う。前提事実について整理していこう。

・目を覚ましたのはアトマに見送られた後
・引っ越しのときに家を調べると、「数年前の離婚届」の存在を確認できる
・引っ越しのとき、ニケン先生に会うとラヤは「卒業式のとき以来ですね…」と言っている

これらの事実から考察してみると、おそらく

高校卒業時にはラヤはまだ倒れていなかった。卒業後、ラヤが意識不明となり町は大騒ぎになった。そこから、今までは父親のことを黙って見過ごしていたラヤの母親も、離婚届を提出することとなった。数年後、ラヤは意識が回復し、今までのトラウマだった人たちとちゃんと向き合い、アトマともお別れすることができたのだろう。

これが1番自然な流れだろうか。実際、父親と決別したのは母親だったとしても、ラヤはラヤの中のトラウマを乗り越えたことができた、と言えるので、とくに不自然な点は見当たらない。

この時間軸がすこし曖昧だったので、ここでしっかり整理してみた。少しでも役に立てば幸いだ。

感想レビュー(ネタバレあり)

ひろてくの今年のやりたいことリストが1つ埋まった瞬間だった。

✓ゲームでギャン泣きする

おそらくどんな人にも、人間関係でのトラブルはあると思うのだ。しかし、解決できなかったトラブルというのは、心の傷となる。人によっては深い傷となり、傷が増えると生命活動にすら影響してしまう、恐ろしい問題だと言えよう。そして本作は、そんな心の傷の癒し方、乗り越え方を教えてくれたように思う。最大の乗り越え方は、時として、決別することだ。たぶん、ラヤには1人で乗り越えることはができなかったが、アトマという存在、記憶がそれを可能にしてくれた。どんな時でも決してラヤを否定しない。ラヤを肯定し続けてくれる、背中を押してくれる、そういう存在がいたからなのだ。人によってはそれがペットなのかもしれないし、筆者のように「過去に遊んだゲームの主人公たち」なのかもしれない。何にせよ、傷を負ったまま生きることはつらいということ、それと心理的に決別することも解決なのだと教えてくれたように思う。そうだ。最強の薬は

アトマだ。

自分が死んでいると分かって、ショックは受けてもラヤのことを応援し続けてくれる。素晴らしい人間だった。筆者はこういう男になりたい。かっこいい、かっこよすぎだアトマ。そう、この記事はアトマへの愛を叫びたいから書いた、というのがホンネだったりする。

本当に良いゲームでございました。

小ネタ(クリア後に分かる、ゲームの細かいネタ)

感想書いて終わりってのもあれなので、ちょっと小ネタを少々投下していこう。

赤い本

ATMAの下にかすれて見える文字はRFN。これはアトマとラヤの本。

しっかり、「ラヤ・フイトリ・ニルマラ」と最初から書かれていたのだ。

アトマの前のハイスコアの人物

ここにもラヤが。アトマが、聞いたことあるような、と言っていたが、ラヤのことと知るのは後になってからだろう。

セティアワンさん

「音楽を聴いてギャン泣きする」で登場するセティアワンさんは、現実世界では亡くなっていた。ちなみにそのストーリーを進めると、セティアワンさんの歌声を聴くことができる。筆者の動画でも紹介しているので良かったら見てみて。

記憶に強く残った登場人物

ここからはヒトクセある登場人物を紹介しよう。決してメインキャラというワケではないのだが、濃すぎる人物を紹介したい。

チョコボーイ

チョコに命をかける少年。口のまわりについたチョコは勲章とも言えるだろう。さすがのアトマもそれにはドン引き。

図書室で絶対寝るマン

図書室で絶対寝るマン。図書室に鍵がかかっていたら、図書室の前で鍵が開くのを待つ。鍵が開けばアトマより先に入ってまた寝る。

なんなんだこいつは。

猛獣

猫を追い回す猛獣。猫を2度にわたって追いかけまわし、現実世界に戻ったらアヒルに恋をする。なんでもいいのかお前は。こいつも濃かったのでリストインだ。

おわりに

だいぶ長くなってしまったが、最後まで読んでいただけたなら嬉しい。筆者のひろてくはストーリー性のあるゲームが大好き。そういうゲームはこんな風にやりこんで記事にしたりするので、良ければ関連リンクからYouTubeのチャンネル登録していただけると嬉しい。良い作品は広めたいのだ。そして最後にもう一度言わせてほしい。

お゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛おお゛お゛お゛お゛ん(涙)

関連リンク

◆『A Space for the Unbound 心に咲く花』のSteamストアページ
◆筆者がYouTubeで実況配信した【A Space for the Unbound 心に咲く花】の再生リスト
◆筆者のYouTubeチャンネル

A Space for the Unbound 心に咲く花 © 2023 Mojiken. Toge Productions

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