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『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2021)の映画感想(ネタバレあり)

一乃

ホラーと本と映画と猫とレオパが好きな者です。

基本情報

クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2021)
原題:A Quiet Place: Part Ⅱ
製作国:アメリカ
監督・脚本:ジョン・クラシンスキー
キャラクター原案:ブライアン・ウッズ、スコット・ベック
出演:エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ、キリアン・マーフィー

あらすじ

前作『クワイエット・プレイス』で怪物への対抗手段を手に入れたアボット一家。母親のイヴリン(エミリー・ブラント)、姉のリーガン(ミリセント・シモンズ)、弟のマーカス(ノア・ジュープ)は、それまで暮らしていた家を離れて他の生存者を探しに出ることとなった。そこで偶然入り込んだ工場跡では、かつて父親・リー(ジョン・クラシンスキー)の友人だったエメット(キリアン・マーフィー)が一人で生き延びていた。


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作品紹介

1は多分映画館で観たものの、こちらの続編は何となく見逃したままになっていたのだが、作品世界の始まりを描く『クワイエット・プレイス:DAY 1』が始まるということでようやく鑑賞の機会を得た。

前作『クワイエット・プレイス』のキャッチコピーは「音を立てたら、即死。」だった。
今作『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』のキャッチコピーが見出しの「音を立てたら、超即死。」である。超即死って何?

ともかく、話は前作から完全に地続きになっているので、こちらから見るのはおすすめしない。1から順番に履修したほうがよい。簡単に言うと、音にやたらと敏感で俊敏で獰猛な謎のクリーチャーが突如地球に襲来し、人間が文字通り息をひそめて生きなくてはならなくなった世界の話である。

そこで主人公一家は力を合わせてサバイブしているのだが、特にキーパーソンとなるのは長女のリーガンだ。彼女には聴覚障害があり、それゆえに一家は手話での会話に慣れている。音を立てずに意思疎通が可能な点はかなりのアドバンテージなのだが、一方耳が聴こえないのには当然リスクもある。前作では色々なアイディアで音を立てないよう生活しており、世界観のリアリティへのこだわりが感じられる良作だった。

↓最新作『クワイエット・プレイス:DAY 1』の感想レビューはこちら!

こんな人におすすめ

・前作『クワイエット・プレイス』を楽しんだ人
・サバイバルホラーの緊張感と家族の絆を両立した物語が見たい人
におすすめ。
特に前作を楽しんだ方には、一家のその後を見届けるという意味でぜひこちらも観ることをおすすめする。

ざっくり感想(前作のネタバレあり)

この先より、必然的に前作『クワイエット・プレイス』のネタバレが含まれるので未見の方は注意してください

前作も今作も、家族の話である。家族が困難を乗り越え、協力して生き延びていく。
前作では幼い弟の死、そして新しい命の誕生ときて、遂に一家の柱である父親が子を庇って命を落としてしまった。残された三人は悲しみに暮れるものの、父が改良を続けていたリーガンの補聴器の発するノイズが怪物に効果的だと判明し、その貴重な武器と共に新たな世界に踏み出すことを決意する。

母のイヴリンは相変わらずタフなのだが、姉弟の成長も今作の見どころだ。リーガンは自分の補聴器で他の生存者たちを救えるのではないかと意気込んでおり、姉に比べてちょっと臆病だったマーカスも赤ん坊を守るために奮闘する。
そして、不在の父親ポジションとして登場する新キャラのエメットも超重要人物だ。彼は一家の旧友なのだが、ここにきて偶然の再会を果たす。彼の貢献がなければ本作は成立せず、バッドエンドに終わっていたかもしれない。

ストーリー解説・感想(ネタバレあり)

初めて描かれた「1日目」

今作の冒頭は、平和な光景から始まった。晴れ渡る空と、のどかな町で行われるリトルリーグの野球試合。
そう、今回初めて「事が始まった日」が描かれたのである。近々公開される『クワイエット・プレイス:DAY 1』はそれこそ「1日目」にフォーカスした作品だが、アボット一家がいかにして前作の生活へ至ったのかがここで初めて明かされたわけだ。
前作の冒頭で一家が立ち寄った雑貨屋(洋画によく出てくる、やたらと何でも売っている系の個人商店っぽいお店)がちゃんと営業しているシーンがあるのも感慨深い。末弟が持ってきてしまったあのおもちゃも映される。この、決して都会ではないこじんまりとした町の牧歌的な風景と、今現在の殺伐とした状況のギャップがなかなかよい。

さて、冒頭で「謎のクリーチャーが地球に襲来した」と書いたのだが、本当にあいつらは隕石と共にやってきたのであった。野球の試合中に隕石が降ってきたと思えば、即座にクリーチャーが暴れまわり人々を虐殺していく。びっくりするほど理不尽極まりない。こいつらのはっきりとした正体はそのうち明かされたりするのだろうか(特に明かされなくてもいいのだけれど)。

そして、この最初のシーンに既にしっかりと登場しているのが新キャラのエメットである。試合を観戦しながら、リーガンに「ダイブって手話でどうやるの?」と尋ねたりしている。ちなみにこの会話はちゃんと伏線になっており、丁寧な回収のされ方をする。伏線の回収のお手本みたいな回収っぷりだったので変な感動を覚えてしまった。

生存者たち、そして勝利への第一歩

今作の大きな目標は、他の生存者を探すことだ。エメットと出会った一家は、ラジオでひたすら同じ曲を流している放送局があることを知る。それが生存者から他の生き残りへのヒントだと気付いたリーガンは、ラジオを流している放送局がある島へ向かい、そこから補聴器の高周波を流せば怪物を撃退できるのではないかと考える。
何やかんやでエメットと共に島へ渡るための船着き場に辿り着いたリーガンだが、そこには崩壊世界につきもののやばい盗賊団的なグループが隠れ潜んでいた。あわや引き離され身ぐるみ剝がされるかと思いきや、エメットのウルトラ機転によって二人はなんとか無事に船で逃れることに成功する。エメットは本当に機転が利くのである。さすが一人でも生き延びてきただけのことはある。

果たして、島には生き残りたちのセーフプレイスがあった。怪物は泳ぐことができず島に渡ってこられないので、彼らは安心して喋ったり音楽を聴いたりして生活していたのである。まあお察しの通りサバイバルホラーのこういう場所は大体最終的に崩壊するのだが……。

一方その頃、マーカスは自分のうっかりで赤ん坊共々窒息死の危機に陥りつつも何とかイヴリンに助けられたりしていたのだが、潜んでいた拠点にも怪物が侵入してきてしまい、再び絶体絶命のピンチに。
他方、島にいるリーガンは、船で流れ着いてしまった怪物を避けながら放送局に向かい、補聴器の高周波ノイズを電波に流すことに成功する。「ラジオを聴き続けて」という彼女の置き手紙に従っていたマーカスは、リーガンの成功に気付き、ラジオで流れるノイズで怪物をひるませる。ここで二人が別々の場所で同時に怪物を倒すことに成功するシーンは、ベタといえばベタな撮り方ではあるのだが、姉弟二人の成長を感じさせるアツい場面だ。

前作のラストから比べると、更なる進展を感じさせる希望あるエンディングである。一応パート3も製作が決まっているらしいので、リーガンの武器によってこの状況に終止符が打たれたりするのだろうか。
ホラー映画は基本的にバッドエンドの方が好みではあるが、この映画のテイストで一家全滅されるとかなりショックなので、本シリーズに限っては彼ら一家がどうにかして生き残る未来を希望したい。

個人的な余談

鑑賞前は、前作で父親が亡くなってしまったので、きっと今作では母親が柱となって家族を支えていく展開なんだろうなーと思っていたのだ。だが蓋を開けてみると、父親ポジションが外から補充される展開になっていた。亡き父・リーが非常に頼りがいのある冷静沈着な人物だったのと同様に、エメットもこれでもかというくらい頼れる人物である。
「父親」というポジションはどうしても必要不可欠だったのだろうか?母親だけでは駄目だったのか?という点が唯一のちょっとした引っ掛かりである。なぜなら、母・エヴリンは家族を引っ張っていくのに十分なタフさを持っているキャラクターなので。もちろん一人で子供三人を抱えてサバイブするのは相当困難だとは思うのだが、何かもっと他の形がなかったのかなあと思ったりもする。

ただエメット自体は普通にいいキャラクターなので、とりあえず死なずに済んでよかった!ほんとにね!

今後のシリーズ展開

あと今度は世界観を同じくしたゲームも出るらしい。映画の続編は2025年公開に向けて準備中とのことなので、ゲームの方が先に出ることになりそうだ。続編を待つ間にこちらもできれば楽しみたい。

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