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『親切()な駅』の考察・攻略・ストーリー解説・エンディング紹介・感想レビュー

ひろてく

主にホラゲの考察や感想記事を書いてます。 ストーリー性の強い作品が好きで、たまに映画の感想記事も。

本記事では、全エンドコンプリートクリア済の筆者が

◇前半ではゲームの概要から魅力・どんな人にオススメのゲーム?をご紹介

◇後半ではネタバレありの考察・エンディング分岐条件の攻略情報、エンド紹介・感想レビューなどのパートをお届けします

既プレイの方も未プレイの方も是非ご覧ください。

※本記事は自殺表現や恐怖画像、恐怖描写などの表現を含むため、苦手な方はご注意ください。

『親切()な駅』の基本情報

開発 / 販売元Studio非
対応機種Steam
価格¥800
ジャンルホラーアドベンチャー
プレイ人数1人
発売日2025年7月25日
コピーライト表記© Studio非
ゲームインフォメーション

ゲーム概要

巨大迷宮『親切()な駅』に迷い込んだ主人公は、構内に散りばめられた案内サインを道標に『輪刈魔線』への乗り換えを目指す。 進むにつれて様子がおかしくなっていく案内サインを解読し、『親切()な駅』の謎に迫っていきましょう。

(Steamストアページより引用)

どんなゲーム?

『親切()な駅 | Kind Station』は、日本のインディーゲーム開発スタジオ、「Studio非」による、一人称視点の3Dホラーアドベンチャーゲームだ。

ゲームは、突然何者かに駅のホームから突き落とされ、電車に轢かれるところから始まる。

ところが主人公はなぜか生きており、気づけば電車に乗っている。

しばらく走る電車で過ごしたあと、たどり着くのは「親切()な駅」。

そこは、奇妙な配色の看板が並ぶ、広大な迷路のような異世界だ。

駅中に並ぶ看板は、「輪刈魔線」という謎の路線を、どこまでも案内をし続けている。

この駅はいったい何なのだろうか。

不気味だけど魅力的な駅が、あなたを待っている。

本作の魅力

電車に轢かれて始まる異様さ

本作は、電車に轢かれてゲームが始まる。

異世界転生かと思えばエルフもオークもいない。

あるのは、見覚えのある現代日本の駅のようで、どこかおかしい世界。

遊べば遊ぶほど、気になっていくストーリー構成がよく出来ている。

コインロッカーから見える、誰かの過去

本作の物語は、駅内のコインロッカーを中心に展開されていく。

そこに落ちている新聞紙やウェブニュースの記事から、少しずつ物語を紐解いていこう。

SNS上の反応も視覚的に表示され、世間の声がストーリー背景に色を灯していく。

しかし、いったい誰の過去なのだろうか。

リミナルスペースな駅内

駅内は広大で、日本に住んでいる人なら誰もが見慣れたはずの、日常の風景が広がっている。

しかし、この駅はどこかズレている。

人の気配はなく、「不自然に曲がる通路」や「意味のないエスカレーター」に出くわすこともある。

駅内のすべての場所に「リミナルスペース感」が漂い、

それも本作の大きな魅力の1つとなっている。

どんな人にオススメのゲーム?

どんな人におすすめ?

  • 現代的なSNSを組み込んだ、練られたストーリーが好きな方
  • 異世界的な雰囲気のあるゲーム好きの方
  • マルチエンディング形式のホラーゲームが好きな方

本作は、異世界の広大な駅内を舞台に、コインロッカーから見つかる情報の断片を読み解いていく構成だ。情報の中には、SNSの反応が大量に、立体的に表示される。視覚的にも楽しく、リアルな書き込みがゲームの世界観を拡張する、一風変わった魅力的な要素となっている。現代に生きる私たちにも理解しやすく、共感しやすい作りだ。また、本作の舞台となる駅はリミナルスペースそのもので、駅内や導線それ自体に意味はなく、常にズレた異世界感が漂っている。さらに本作は、1周目をクリアすると、ストーリーが変わった2週目に突入する。マルチエンディング形式ホラーゲームが好きな方にも満足のいく作品だ。

下記パートからネタバレ注意

ストーリー解説・まとめ(1周目ベース)(ネタバレあり)

突然背中を押され、線路に横たわっていた。電車は警笛を鳴らしながら容赦なく自分に向かってくる。人生は突如として幕を終えたように思えたが、気づくと電車の中にいた。車内の電光掲示板を見ると、電車は「親切()な駅」を目指していた。駅は、ピンクと水色のパステルカラーを基調としたカラーリングで彩られており、存在する看板はすべて「輪刈魔線」を指している。

ホームの階段を登っていくと、そこは迷宮であった。いくら歩いても輪刈魔線には到着しないどころか、異常に長く続く通路や階段が姿を現すだけだった。さらに奥にあった長いエスカレーターを登り、ロビーのような場所を抜けるとコインロッカーがあった。主人公が近づくと、黒い足跡がおもむろに歩き出し、落ちている新聞紙の前で止まる。しばらく立ち止まり、そして内容を確認したかのようにまた次の新聞紙へと歩いていく。4部ほど見てみたが、見出しはいずれも、「出生率」「若者の性の乱れ」「家庭内犯罪増加」など、子どもにまつわる社会問題について書かれていることが分かった。

それからも迷宮は続く。大量の電光掲示板が行く手を阻んできたり、いくつかエレベーターを乗って道を進むと、またコインロッカーが姿を現す。主人公がコインロッカーに近づくと、待っていたかのように黒い足跡はペタペタと動きだし、今度は新聞紙のない場所で止まる。止まった場所に近づくと、今度は古めかしいパソコンのブラウザにネット記事が表示されている。どうやらコインロッカーに捨てられた新生児が3日間放置されるも、奇跡的に命に別状がなかったそうだ。匿名掲示板の反応も横に見え、捨てた親への怒りや、子どもの将来を思うネットの声がよせられていた。さらにニュース記事は続き、奇跡の赤ん坊にはG夫妻という里親が見つかり、名前はG夫妻のホームページで公募され、名前は「エン君」に決まった。

コインロッカーでのイベントを終えると、やはり待っているのは迷宮。途中スイッチがあったり、押すと縮む売店があったり、いくつもの通路が空中を交差する巨大なホールを抜けたりと、もはやダンジョンそのもののような様相を呈している。そして待っているのはやはりコインロッカーだ。前のコインロッカーから3年が経過し、エン君は幼稚園児になっていた。G夫妻がマネージャーとなり、エン君は子役デビューし水9のドラマで主人公の息子役をしていた。他の記事では、エン君が国内屈指の難関私立小学校に合格したことや、10本目のCMで国内のランドセルメーカーのモデルに起用されたことなどが報じられている。さらにほかの記事では、エン君は12歳を迎え、これまでは裏方に徹していたG夫妻もテレビに出演するようになり、親子タレントとして人気を博していることが書かれている。

次の迷宮では、勝手に写真を撮ってくる大量の証明写真撮影機があったり、構内案内所に設置されたロボットの話を聞いたり、奈落に落ちたり。落ちた先には奇妙なコントロールルームのような場所。3面張りのモニタに、構内案内板にかかれていた案内ピクトグラムがいくつも表示されている。画面には3つの看板を選択、とあり、階段とエレベーターのマークを押せば先に進むことができた。そしてその奥は最後のコインロッカーである。

黒い足跡が止まる場所に表示される画面が、スマホデバイスのような縦長のものに変わっていた。時間は進み、エン君は中学3年生になっていた。あれからたった2年のことであるが、メディア露出は減少し人気が低迷しているようだ。次の記事では、エン君とG夫妻が、親のいない子どもを金銭的に支援する団体を設立し、SNSも開設され、月2回ほどのチャリティイベントを行うという。さらに次の記事では、「コインロッカーキティ」という標題とともに、奇跡の赤ん坊エン君がコインロッカーに閉じ込められた猫を助け出したというSNS投稿が紹介されている。
しかしそれは自作自演だとされ、炎上してしまったという内容だ。SNSの反応は、エン君への冷たい反応ばかりだった。そして最後の記事は、エン君とG夫妻の親子関係解消疑惑の記事だ。記事によると、G夫妻は1年近く家を空け、高級リゾート地で散財を行い、エン君との連絡は週に1回5分程度の電話だけだという。SNSの反応では「1年で2800万!?」といった声が寄せられていた。

一世を風靡した人気の急上昇と急降下。そしてG夫妻との親子関係の亀裂。最後のコインロッカーの先には、最後の看板が待っている。左に行くと両親の間で両手をつないだ子どものピクトグラム、そして右は1人の大人と大勢の子どものピクトグラムだ。その先へ進むと、物語はエンディングを迎える。

全エンディング条件・紹介(攻略・ネタバレあり)

1周目エンド

条件

1周目のプレイで、最後の看板で左方向に進む。

内容

左へ進むと、新しいニュース記事が浮かび上がる。渦中のエン君を取材する内容で、そこには「一度でいいから人として扱われたかった」という彼のコメントが載っている。カメラに背を向け、心を閉ざしたまま写る後ろ姿の写真、そこにはどん底の雰囲気のエン君がいた。エレベーターを降ると、最後の記事が現れる。G夫妻はチャリティ詐欺の容疑で取り調べを受け、エン君は行方不明になってしまったという。そして主人公はついに別のホームに到着する。だがそこにあったのは「輪刈魔線」ではなく「明快線」、そしてホームの中央には看板のピクトグラムの姿をした人間がホームに立っている。主人公はその人物の背後に立つと、電車が来る直前にその人をホームから突き落とすのだった。場面は真っ暗闇のコインロッカーの中へと切り替わり、赤ん坊の泣き声が響く。そして、電車に乗る誰かの姿がぼんやりと映し出され、1周目は幕を閉じる。

備考

結局1周目のプレイでは、主人公が首を横に振って戻ってしまい、看板の右方向には行けない。

2週目エンド

条件

2週目のプレイで、最後の看板で右方向に進む。

内容

2週目では、1周目と同じ駅のホームに電車が到着するが、駅の様子がどこかおかしい。看板が壊れていたり、1周目で通れた道が塞がれていたり、逆に開かなかったドアが開いていたりする。さらに、道の先が大量の文字化けウィンドウに覆われて進めなくなったり、やたら難読なワンタイムパスコードを解くミニゲームを突破したりしながら、探索は進んでいく。1周目よりも短く、まったく異なるルートの先で、ついに「輪刈魔線」のホームが姿を現す。しかしホームへの入口はまたしても文字化けしたウィンドウに邪魔されており、そのウィンドウを足場代わりにして、ホームの上側から進むことになる。その先にあるのは、1周目と同じくコインロッカー。だが最初からエン君は中学3年生の姿で登場し、1周目同様、人気は低迷している。ところが、コインロッカーに表示される3枚目の記事から、空気が一変する。3枚目の記事が、かつての「コインロッカーキティ」ではなく、車道に投げ出された犬をエン君が救ったSNS投稿が話題となっていた。取り上げ方もSNSの反応も好意的で、世間がエン君を見直している様子がうかがえる。さらに次の記事では、G夫妻と共に過疎地域を巡りながら、チャリティ活動を行っている様子が報じられる。こちらも前向きなトーンで、SNSの声も温かい。
そして最後の看板を右方向へ進むと、また新たな記事が表示される。今度はチャリティ詐欺など存在せず、G夫妻とエン君による支援活動が称賛され、その活動についてインタビューを受けるエン君の姿が記事になっている。写真には、大勢の聴衆を前に話すエン君が、カメラに背を向けて写っていた。さらに最後の記事は、経済産業省による「次世代コンテンツ賞」の受賞を報じる記事。1周目とはまったく正反対の未来が描かれた記事を後に、主人公は再び「明快線」のホームへとたどり着く。そこには1周目と同じく、ピクトグラム姿の人間がひとり立っており、主人公はその背後に立つ。電車が警笛を鳴らしながら向かってくる中、また背後から押すのかと思いきや、今度は突き落とすのではなく、手をつなぐ音が鳴り、2人が手をつなぐ姿が映し出される。シーンは1周目と同じく、暗いコインロッカーの中へ。しかし今度は扉が開き、赤ちゃんの泣き声とともに外の光が差し込む。最後に、再び誰かが電車に乗り込む描写を経て、電車が走り出す中でエンドロールが流れる。エンドロールが流れ終わると、実写映像の電車内が映し出され、地下鉄がトンネルを抜け、明るい地上へと出る場面で締めくくられる。その後、開発のロゴが表示され、ゲームは1周目からリスタートする。

備考

ちなみに2週目では、最後の看板で左方向に進もうとしても、主人公が首を横に振り、選ぶことはできない。今度は右方向にしか進めなくなっている。

【ネタバレ考察】「親切な駅」とは何だったのか/ 最後の看板の意味 / エン君の名前の意味 / コインロッカーに3日入れられて生存可能?etc...

「親切な駅」とは何だったのか

実は本作の概要は以下のようにSteamストアページに書かれている。

『親切()な駅』は、駅構内に設置される案内サインのデザインにおける”親切さ”と”分かりにくさ”に着目して制作された迷路ゲームです。

タイトルの親切の後に使われている括弧「()」は古いネットスラングで、(笑)の省略形。やや皮肉や苦笑を含んだニュアンスを持っている。まさに「親切なつもりが、逆に意味が通じなくなってしまう」という駅の看板の現象に着目したタイトルなのだろう。さらにオープニングで()の箇所と電車のドアが開くような演出があり、ゲーム開発センスが光っている。
だが、本作における「親切」とは、ただ案内サインだけを指しているのだろうか?比喩的に考えるならば、エン君の里親になり、彼を芸能界で成功させるという一連の行為、そのG夫妻の一見「親切」に思える振る舞いと、彼を単なる金の生る木としか見ていない状態を皮肉ったもの、すなわち「()」と言えるかもしれない。そして2週目のエン君が自立して駅を出たというのも、まさに「親切()な駅=G夫妻の支配」から抜け出したという意味で象徴的な展開とも捉えられる。ストーリー全体を通して見ても、本作は人間の偽善もテーマになっているのかもしれない。

最後の看板の意味

1周目ではG夫妻は堕落した。いや、もともと汚い目算があり、エン君を金の生る木のように育てていたように感じる。名前を公募し、子役として芸能界に入れ、自身も芸能界入りを果たした。エン君が中学3年生になってから人気が低迷すると、未成年のエン君を放置して、高級リゾート地で1年もの間バカンスを楽しむなどして不仲になり、挙句の果てチャリティで詐欺容疑までかけられてしまう。最後の看板のピクトグラムの意味を考えると、左側は「一生G夫妻に操られた子どものエン君でいる」ことで、右側は「人生を自分で切り開き、チャリティで親のいない子どもたちを援助する」という意味になるのだろう。エン君が自立し、彼主導でチャリティが行われたことで、チャリティは正常化され、詐欺など起こらない世界線になったのだろう。だが、G夫妻が改心したかどうかを考えるとそれは微妙なところだ。たぶん改心はしていない。

エン君の名前の意味

最初のネット記事で、奇跡の赤ん坊の名前がG夫妻のホームぺージで公募されたことが報じられている。G夫妻が「社会の子」と言って公募した手法は、プロデュースの上手さを感じる。ところが、「エン」というカタカナの名前は珍しいので、実際には何かしらの漢字が元となっているのではないだろうか。社会の子なので「円」や「縁」なのか、色々考えられるだろうが、筆者的には人々が集まって楽しむ場所という意味の「園」を思いついた。最終的に彼主導のチャリティで自分のコミュニティを作ったことが、ゲーム内でも彼のゴールっぽかったし。

ロッカーからの人生の「ロック(閉じ込め)」を象徴?

2週目のエンディングで、コインロッカーに閉じ込められた赤ちゃんは救出された。これは、G夫妻に支配され、人として扱われなかったエン君の1周目の人生を描いており、2週目でやっと支配された人生を抜け出せたのだ。その最たる証拠が、トンネルを抜けた地下鉄の描写だろうか。だが、本作では1周目のG夫妻のクズっぷりに焦点が当てられがちだが、エン君を捨てた本当の親の描写はほとんどない。下記の小ネタパートで紹介しているが、3つの看板を押す場面で、「ERROR」を押すとエン君の母親らしきKが一瞬だけ映し出されるくらいだ。本作のストーリーの面白い点は、生みの親Kの物理的なロックと、人生の支配という意味のロックで2重の意味がかかっていると思われることだ。この二重のロック構造は、なかなか深いテーマ性を感じさせる。

実際にコインロッカーに3日入れられて生存可能?

複数のAIにも確認したが、夏の3日間となると「絶望的」だという回答しかなかった。もちろん本作はフィクションであるし、調べても現実に3日もコインロッカーで赤ちゃんが生き残ったようなニュースは出てこなかった。ゲームというアプローチで、本作は社会問題に一石を投じようとしている意図も感じられる。コインロッカーに捨てられ奇跡的に生き残ったエン君が、その手の内容の新聞記事に目が行くのも自然で、ストーリー的に違和感のないなかなか素晴らしい作りだ。

輪刈魔線

本作の目的地、「輪刈魔線」の名前も奥深い。一見、世露死苦、みたいな当て字にも思えるが、エン君を苦しめるループ()を法のだと考えると、なんかちょっとだけ意味が通るかも。でもやっぱり無理やり感あるか。言葉遊びしちゃった。

小ネタ

本作のコインロッカーでは、時代の変化とともに報道媒体が変わっている。初めは新聞紙。次はIE(インターネットエクスプローラー)っぽいブラウザ。次はIE後期っぽいブラウザ。最後はスマホとなっている。良作はこういうところが細かくて好き。

3つ看板を選択のところでERRORを押すと、頭にKと書かれた本当の母親らしいピクトグラム人間が出てくる。突然表示されるのでマジでビビる。

作中の好きなハンドルネーム3選

3位

「吾輩の猫」

2位

主導権を握りたがる寿司屋

1位

まだお母さんと一緒

感想レビュー(ネタバレあり)

コインロッカーから奇跡的に生き残り、里親に恵まれたり裏切られたりする、そんな数奇な人生を描いた、心に残る作品だった。本作には評価すべき点がいくつもある。

まず特筆すべきは、エンディングの構成だ。
一般的な選択肢分岐型ではなく、「1周目」と「2周目」という構造でひとつの物語を完結させる手法が非常に効果的だった。1周目で提示された人生が、2周目で塗り替えられていくという、まるでプレイヤー自身が主人公の可能性に手を伸ばしているような体験ができた。これはストーリー重視の作品として理想的な構造だと思う。

そして本作のタイトル『親切()な駅』。
考察でも述べたように、「親切」という言葉の皮肉的な意味から始まり、それが単なる案内サインの話にとどまらず、G夫妻の偽善や支配構造へのメタファーとして昇華していく。「親切な駅」からの脱出とは、物理的なロッカーからの解放であり、同時に精神的な支配からの脱却でもあるという、2重の“ロック解除”。それがゲーム進行とともにプレイヤーの中で腑に落ちてくる構造は、脚本の完成度の高さを感じさせた。

正直プレイ前は、「コインロッカー赤ちゃん」というセンセーショナルな題材をゲームとして消費しているだけでは?という懸念もあった。
だが、散りばめられたSNSの反応やネット記事、伏線の数々を拾い集めることで、プレイヤー自身が“真実にたどり着く”体験をできる構成に仕上がっており、物語好きの筆者としては唸らざるを得なかった。

実は筆者は、本作の開発による前作『P.I.』もプレイしていた。
あちらも、配信者の住所特定という現代的なテーマをホラーに昇華した秀作だったが、本作ではそれに加えて、人間関係や社会の矛盾を描く物語性がより濃密になっていたように思う。また、プレイヤーからの「ゲームが重い」といったレビューに素早く対応し、グラフィック設定の追加アップデートを即座に行うなど、開発としての柔軟性や誠実さも素晴らしい。

いやほんと、次の作品も楽しみにしてます!

関連リンク

◆『親切()な駅』のSteamストアージ
◆筆者がYouTubeで実況投稿した動画のリンク【親切()な駅】ホームから突き落とされて異世界駅に迷い込むホラーゲーム
◆筆者のYouTubeチャンネル(記事が良かったら登録して応援お願いします!)

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