基本情報
悪魔のいけにえ(1974/日本公開1975)
原題:The Texas Chain Saw Massacre
製作国:アメリカ
監督:トビー・フーパー
脚本:キム・ヘンケル、トビー・フーパー
出演:マリリン・バーンズ、アレン・ダンジガー、ポール・A・パーティン、ウィリアム・ヴェイル
あらすじ
1973年8月、テキサスの田舎町をドライブしていたサリー(マリリン・バーンズ)たち若者5人は、不審なヒッチハイカーを車に乗せてしまう。ところが、彼の異常な行動に耐えきれず、彼らはヒッチハイカーを車から降ろしてガソリンスタンドへ向かう。しかし、そこで燃料は手に入らなかった。
燃料不足の中、サリーとフランクリン(ポール・A・パーティン)の実家のある土地にたどりついた一行。カーク(ウィリアム・ヴェイル)とパム(テリー・マクミン)は近くに一軒家を見つけ、ガソリンを分けてもらおうとするが、現れたのは人皮のマスクを被った不気味な大男・レザーフェイス(ガンナー・ハンセン)だった……。
作品紹介
言わずと知れたスラッシャー映画の金字塔!
人の皮でできたマスクを被り、チェーンソーを振り回して襲いかかってくる殺人鬼「レザーフェイス」というホラーアイコンを生み出し、そのマスターフィルムはニューヨーク近代美術館に収蔵されているという、スラッシャー映画史上特に重要な作品の一つである。
今回は、日本での初上映から50周年を記念した『4Kデジタルリマスター 公開50周年記念版』というものを見てきた。
公式サイトによると、オリジナルの16mmフィルムネガを4Kスキャンし、傷やゴミ・汚れなどを除去してクリーンな映像にしている一方、ドキュメンタリー風のタッチを生む特有の粒子感は残しているとのこと。
さらに、最新技術で色彩表現を向上させ、音声もオリジナルの意図した恐怖を最大限に引き出しているそうだ。
ちなみに、私(一乃)の行った映画館では残念ながら機材の関係で2K映像だったものの、ざらっとした雰囲気は残っていながら色彩は鮮やかでとても見やすかった。

こんな人におすすめ
・スラッシャー映画といえばこれ!な作品を見ておきたい人
・あまりにグロテスクすぎるのは苦手だけど、ドキドキハラハラしたい人
・「田舎にぽつんと佇む一軒家に住むヤバい一家」の話が好きな人
何となくグロテスクな作品というイメージがあるが、実は直接的な描写は意外とそんなにない。もちろん刺されたり殴られたりはしているものの、肝心な部分はあまり画面に映らないので、人体破壊シーンを見るのは苦手という方でも大丈夫(たぶん)。
ざっくり感想(ネタバレなし)
一乃の感想
人生で約2回目の鑑賞になる。改めて見るとレザーフェイスが結構かわいい。父親に怒られてアワアワしたり、はしゃいだり、獲物を取り逃して怒り狂ったりと、冷酷で残忍な殺人鬼というよりは人間味があるキャラクターとして描かれているのだ。
また前述したように、残酷なシーンそれ自体の描写は比較的あっさりしている。恐怖とは単にグロテスクな描写ではなく、緊迫した雰囲気と状況の積み重ねから生み出されるのだということがよく分かる作品である。
余談だが、今回の公開50周年記念版では、ちゃんとパンフレットも作られている。表紙がソーヤー一家の記念写真みたいになっていてちょっと和む。豊富な場面写真や、『CURE』『回路』などで有名な黒沢清監督のインタビューなどが載っているので記念におすすめ。
さらに余談だが、こちらのパンフレットの記事を主に執筆されているギンティ小林氏は、私の好きなホラー作家の平山夢明氏と一緒に映画のYouTubeチャンネルをされているのでこちらもおすすめしておく。何の宣伝?
ひろてくの感想
ひろてくは初めての観賞だった。オリジナルを知らないので差はよく分からないが、今どきの映画に目が肥えていても画質については気にならず最後まで楽しく見ることができた。正直この手のインディーホラーゲームや映画は大量に存在していると思うが、本作がそれらの元祖だと思うと、終始「なるほど」と思うことばかり。無駄のない洗練されたスラッシャー映画の元祖を見たいのなら見てみたほうがいい。あと人の叫び声がすごいので、耳が良い方は耳栓を持って行ったほうがいいかもしれない。
ストーリー解説・感想・考察(ネタバレあり)
一乃の感想
人の皮でできたマスクを被り、チェーンソーで襲いかかってくる言語を喋らない大男という印象的なキャラクター「レザーフェイス」。もちろん彼が本作のアイコン的存在なのだが、本作に出てくる脅威はそれだけではない。
序盤で若者たちが拾った、見るからに不審なヒッチハイカーの男。撮った写真を車内で燃やしたり、他人のナイフで自分の手を切りつけたりとヤバい行動を取るその男の正体は、世間を騒がせていた墓荒らしであり、レザーフェイスの兄だったのである。
そして一行が立ち寄ったガソリンスタンドの店主も、なんと彼らの兄だった。ここにほとんどゾンビみたいなお祖父ちゃんを加えて、本作のヤバい家族・ソーヤー一家の完成である。
どう見ても話が通じなさそうな弟たちよりも、一見普通に社会生活を営んでいるっぽい長兄が一番危ない奴に思える。実際、レザーフェイスに追いかけまわされてガソリンスタンドに逃げ込んだサリーも、最初はこいつが助けてくれるものと思っていたのだ。その後まんまとソーヤー家に連れ戻されてしまうのだが……。
九割ゾンビみたいなお祖父ちゃんも謎である。誰がどう見たって干からびた死体なのだが、与えられたサリーの血を嬉しそうに吸うシーンはものすごく気持ち悪い。
本作のファイナルガールである、そのサリーに話を移そう。ファイナルガールとは、ホラー映画(主にスラッシャー映画)で最後に生き残る、大抵は若い女性キャラクターのことを指す。
本作ではサリー以外の登場人物は衝撃的なほどあっさり殺されてしまうので、後半はただひたすらサリーが叫んだり逃げたり叫んだりしている展開になる。本当に終始叫びっぱなしなのだが、レザーフェイスに追いかけられて藪の中を走っている途中、疲れたのか急に無言になるシーンがある。そこがなんだか妙にリアルさを感じて好きだ。
また、ラストシーンで遂に逃げおおせるシーンでは、悔しがるレザーフェイスを尻目に、サリーはトラックの荷台でヒステリックな笑い声を上げる。ざまあみろ!逃げてやったわよ!という感情と、度重なる恐怖でちょっとおかしくなってしまっている感じがめちゃめちゃ伝わってきて好きなシーンである。
その後レザーフェイスが怒り狂ってチェーンソーを振り回すシーンが、この映画でも特に有名でアイコニックな場面の一つである。テキサスの荒れ地を照らすオレンジの夕陽、踊り狂うようなレザーフェイスのシルエットが美しい。というわけで、今回はこの場面を描いてみました。
ひろてくの感想
レザーフェイスの一振りにはためらいがない。話の通じない相手が無敵のパワーを持っていたら人は勝てないのである。そんな生物的な敗北を感じさせられる映画だったように思う。
それにしても、序盤にあれだけ主要人物が処理されて、最後にサリーが死にそうで死なないのが不思議だったが、これがファイナルガールか、と納得した。そういえばバイオハザード7も本作のオマージュシーンがあったが、あちらは主人公のイーサンが掴まっていたのでファイナルパパになるのだろうか。
本作で1番の感想は、サリーのボイスの大きさ。まぁあれだけのことをされたら叫ぶのは普通のことなのだが、あと映画館の設定もあるかもしれないが音量が大きすぎてこっちの頭も割れそうだった。そう、僕の耳は悪魔のいけにえによって先に天国に行ってしまったのである。